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Re: Prologue of Tragedy

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なし Re: Prologue of Tragedy

msg# 1.1.1
depth:
2
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2013/6/23 11:59 | 最終変更
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○散れど消えず

この世界に、もし。「楽園」があるとすれば。
楽園の所在を尋ねれば、ティ・ラフィールを訪れた幾人かの旅人は、きっとこの地方の名前を挙げるだろう。
ヴォルニーエ地方。ティ・ラフィールを訪れた者で、知らぬ者はいない。

彼方まで続く黄金色に輝く小麦畑。色とりどりの果実樹。香り高い茶葉の常緑樹が織り成す、緑溢れる自然。
人々を絶望に突き落とした、九月鳴乱の折ですらこの地方は戦の気配などなく。
ティ・ラフィールで消費される食料の多くはここで生産されていた為、公国軍や革命軍に食料を輸出する事で危うい平和を保ち続けていた。
そんな、別世界のような地方の、一つの小さな村で。二人の人物は邂逅した。

「……ほう。偶然か、久しいな若造。最近は見かけなかったが」
椅子に深々と腰掛け、紅茶の香りを楽しむ老人。
「うるせぇな、こちとらあんたみたく暇じゃないんだ爺さん。アンタの呼び出しに一々応じてられん」
そして、対するは厳面の筋骨隆々とした逞しい軍服姿の男。

一人は文豪ニーチェの名を冠し、ティ・ラフィール連合国海軍の大長老であるヴィルヘルム・ニーチェ。
そしてもう一人は、ティ・ラフィール最高評議会の評議員の一人であり、軍務部長であるグラナ・ヴァルシュタイン。
どちらもティ・ラフィール連合国の軍事を取り仕切る要人。

「そう冷たい事を言うでないわ。わしとお前の仲であろうが?」
「生憎、俺はこんな渋面の爺に知り合いはいない。どうせなら美しい女性の友人が欲しい所だ」
そう軽口を叩き合い、他愛の無い話を紡ぎ続ける二人。然しグラナが突然、小声でヴィルヘルムに囁く。
「……ところで爺さん。最近、どうにも兵の動きが活発でな。私兵残党の類だ」
ここ数週間、南部地方で謎の武装集団が跋扈しているとの報告を受けていたものの、その実態はまだ掴めていなかった。
評議会内部でもキルヒアイゼン家とメイスナー家の権力闘争は続いており、それに関連しての事だとは容易に推測出来た。
「分かっておる。……また、近い内に兵乱が起きるだろうて。お主は関与せぬ方が良い、この国の将来を想うならばな」

渋面の老人は深い、哀しみの溜息をつき。

「……だが俺はなァ。悔しいんだ。莫迦貴族どもは自分の利益と権力のみに執着していやがる……いつ、この国は…平和が訪れるんだ?」
厳面の男は、顔を伏せながら静かに哭き続けた。

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