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ゲスト: 227
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Re: Prologue of Tragedy
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Prologue of Tragedy (ゲスト, 2013/6/23 11:51)
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Re: Prologue of Tragedy (ゲスト, 2013/6/23 11:57)
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Re: Prologue of Tragedy (ゲスト, 2013/6/23 11:59)
- Re: Prologue of Tragedy (ゲスト, 2013/6/23 12:23)
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Re: Prologue of Tragedy (ゲスト, 2013/6/23 11:59)
- Re: Prologue of Tragedy (ゲスト, 2013/9/16 3:56)
- Re: Prologue of Tragedy (ゲスト, 2013/11/9 14:35)
- Re: Prologue of Tragedy (ゲスト, 2013/12/18 1:19)
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Re: Prologue of Tragedy (ゲスト, 2013/6/23 11:57)
○複痛フィルネスティ
一定の間隔を守り、つるはしが落ちる。それは鉱石を粉々に砕け散らせる。
一定の間隔を守り、荷台車は動いて行く。それは砕け散った鉱石を製鉄所へ運んで行く。
此処は鉱山。此処は希望の山。
某国の巨額の投資を受け、高価な機材を使いせっせと作業員たちはウラン鉱を掘り出して行く。
けれど、哀しきかな、今、その鉱山は地獄そのもの。絶望そのもの。
呻き声を上げ、贓物は腹からはみ出し、腕は千切れ。蛆虫が死肉を食らい、ぶくぶくと太り、子を為す。
それは、全く現実味がなく、かといって目を背ける事の出来ない現実だった。その中で、また、一人、断末魔を上げながら魂を散らせる。
その身体は塵のように焼却炉に捨てられ、まとめて燃やされる。そして、そのエネルギーは発電所にまわされる。
作業員は想う、この外に広がっているのであろう、ルフトシュロスの絶景を。
この絶望に満ちし鉱山からそれを今、見る事は出来ない。
ただ、外が恋しい。
ただこの中で、嗤い、歓喜し、狂笑を上げ、妖艶さと婉然さが入り混じった笑みを浮かべるのは。
「傾国者」――アイリス・キルヒアイゼン、ただ一人。
○壊人ドメスティック
「あら、お兄様。お帰りなさい」
邸宅戻り、使用人の挨拶も無視して真っ先に自分の部屋に向かうと。
そこにいたのは、今となっては唯一の家族。愛しき妹。
「ああ、只今。今日もお偉いさん方に囲まれてきたよ」
「そうでしたか。私もウラン鉱山の視察に出向いて参りました」
「ふむ、そうかい。どうだった、開発具合は」
「そうですね、某国の援助もあり開発は概ね順調。落盤事故もあり死傷者も出ましたが。
仕方ありませんね、国の礎を築く為なら。少々の犠牲は、伴うものです」
くすくす、と妹は嗤う。しかし私は思う。
我が妹ながら、「恐ろしい」と。いつから妹は、こうなってしまったのだろうか?
「…お兄様?怖い顔になっていますよ……?」
「ああ、我が妹ながら恐ろしい、とね。……ところで、アイリス」
愛しき妹はきょとん、としながら首を傾げる。
その仕草の一つ一つは、幼い風貌ながら成熟した女性のような情欲を掻き立てる。
「お前までこんな政治の世界に身を置くことはない。良い伴侶を見つけて、
恋に焦がれる少女として過ごす事も出来る。今からでも遅くない、評議員を――」
その言葉を最後まで発する事は出来ず。妹の小さな指が、私の唇に当てられた。
「お兄様。私は、私の意思で。私の信念に基づいて、今の地位にいます。
私は、許せない。母上、姉上を殺した平民たちが。それはお兄様も――同じでしょう?」
その声は。憎悪。哀愁。妄執。様々な感情が綯い交ぜになった、狂気の声だった――。
○音無きテイクエヌジィ
その都市は希望だった。
ティ・ラフィール連合国首都、アウセクリス。かつてはティ・ラフィール経済の中心地として繁栄し、巨万の富を集めし都。
『希望の都』
商人たちが珍しい品を集め、民はそれを買い求め。物で満たされ、幸せで満ち足りていた都。
そして今は、戦乱で全てを失い、ただの瓦礫と化した没落した都。
公国軍と革命軍の市街戦が繰り広げられた結果、全ては灰燼と化し、住まう者は悉く剿滅され。
犯罪者が跋扈し、治安の悪化、衛生状況の悪化に伴い疫病が蔓延し、今では地獄を形容したかの如き有様。
復興の為に死力を尽くすも、その度に略奪陵辱の憂き目に遭い復興すらままならぬ。
それを変えたのは、他ならぬキルヒアイゼン家。自らが持つ財を全て投じ、私兵で治安部隊を組織し、
三年ほど経った頃にはまだ廃墟の面影は残るものの、人が住まう事の出来る環境へと変貌させた。
講和会議後、復興を指揮したキルヒアイゼン兄妹が評議員に当選したのもアウセクリスの民の支持を得た結果であり、
自然な流れと言えるだろう。自然と商人達も戻り、かつての活気を取り戻そうとしていると感じ取った民は
アウセクリスが良き方向に進む事を信じて疑わず、希望を持ち始めた頃。その希望、幻想は打ち壊され。
復興を指揮した一人である、アイリス・キルヒアイゼン。
彼女の手によって、絶望に変えられようとしている事は未だ誰も、知る由も無かった。