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Re: Prologue of Tragedy

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なし Re: Prologue of Tragedy

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2013/12/18 1:19 | 最終変更
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◆魔女の終日、暴君の歎き、世界の号哭(The first fairy tale.)

――アルターナ歌劇場「囀りの間」

 其処にいたのは、二人の人物。一人は、電撃婚約発表後退位した「古の魔女」エリーゼ・シェルストリア。もう一人は「新たな皇帝」シャルル・リュシー・オルレアール。オルレアール候家。其は遡れば、500年前の宇宙漂流時代に祖を持つ名家の一つであり、シェルストリア家の分家でもある。
 エリーゼ・シェルストリアの兄であるアリオス・シェルストリアの息子、アルバート・シェルストリアが父の死後オルレアール姓を名乗り、シェルストリア本家の継承権を捨てて以来、オルレアール家はその血筋を絶やすことなく現代まで生き延びた。

「ようこそ、新皇帝陛下?」

「久しいな、魔女」

 嫣然とした余裕のある笑みを浮かべ、作法通りの会釈をする。古から生きる私にとって、眼前の青年はひよっ子も当然。そう思っていた。しかし、どうしたことか。目の前の青年の視線と表情から感じるのは、圧倒的な威圧感、老獪さと狡猾さを併せもった傑物の顔。
 過去、幾人もの天才と呼ばれた人物と相対した時でさえ、このような――ある種の恐怖感を感じる事は稀ではなかっただろうか。かの偽神や堕天使、黒騎士の気迫に勝るとも劣らない。近いのはルキウス・キルヒアイゼンであろうか。いや、アラン・メイスナーだったかもしれない。

いや、それ以上なのかもしれない。オルレアールの500年の妄執を全て背負ってきたかのような。

 ある人は彼を狂人であると疎んだ。ある人は彼を天才であると賛した。ある人は彼を乱世の梟雄、治世の凡人と評した。今、その理由がよくわかった。理解した。曇天のような色の、淀みきった虚無的な双眸。そこから私が先ず感じたのは深淵。見続ければ見続けるほど奈落の底に追い詰められてしまうかのような。

「どうした魔女、余の眼を見つめて。気色が悪い」

「……あ、あら。そう、ごめんなさいね」

「一々癪に障る女だ。……して、魔女。何が目的だ?
忌み嫌っているはずの余を皇帝の座に就けると言った時には驚いたものだが、それはこの際いい」

「何かお気に召さなかったかしら」

パルシア帝国大幹帝国もこの際良い。いざとなれば、殲滅蹂躙陵辱あるのみ。
だが、エーラーンとレゴリス。あれは、どういうつもりだ。まさか色狂いになった訳でもあるまい」

「失礼ね、彼とはそんな関係には今の所……無いわ。
……だけど、二大国と仲良くしておく事はクラーシェの国益にも叶うことよ?出来れば、だけれど」

 カールスラント戦役やフリューゲル世界大戦でエーラーン教皇国との仲は最悪な状態といってもいい。一歩間違えれば、爆発しかねない程に。今の同盟には教皇国と戦う余裕などない。だから私の代でセッティングと交渉提案を行い、次代の彼の初仕事に相応しいといえるであろうエーラーン教皇国との会談。ここで、実績を積ませる必要がある。そうしなければ魑魅魍魎ばかりの選帝侯の中で権力を保つことは難しい。

「……クラーシェの国益など、余にはどうでもよい。
クラーシェという国家は盤上の遊戯を効率良く愉しむための道具に過ぎぬ。余が関心を示すのは世界征服のみ、即ち覇道」

「恐ろしいものね。レゴリス帝国の前総統は8桁を殺してみせた。
貴方は何桁を殺してみせるのかしら?9桁?10桁?もっとも、そんなに殺していたらこの世界は滅びてしまうでしょうけれど」

「下らん。なるほど、確かに命とは尊いものだ。
だが、余がひとたびそれを娯楽の種とすると決めた以上、あらゆる生命は余の玩具だ。世界の行く末など余の知った事ではない」

「そう、ならいいじゃない。エーラーンとレゴリスとの友好関係を保ちながら、先ず最初にAFN加盟諸国でも滅ぼすと良いわ。
応援してあげる。その次は共産主義者?その次は――」

「魔女、貴様はどうにも喧しいな。少しその口を塞げ」

その瞬間、私の体は宙に浮き――直後、近くのソファーにたたきつけられた。

自分の身に、何が起きたか把握できない。

私は、――何を、された?……いや、この感覚は、どこかで。

鈍い痛み。

私の頭を踏みつける足。
顔はソファーに押し付けられ、喋るところか呼吸すらままならない。

微かに見える。彼の手にある機械――なるほど、私と"同じ力"。力量でいえば、私以上かもしれない。それだけ精度と錬度の高い念動術。
どこでこんな力を手に入れたのかは分からないが、これをどうにかする術を私は持ち合わせていなかった。

「貴様が指図をするな。余がどこを滅ぼすかは余の気分次第。貴様が築き上げたクラーシェの総力で余は世界を征服する。
魔女、貴様はレゴリスの総統を籠絡してさえいればよい。くれぐれも余の邪魔をするな」

「あなた、は……怪物、ね。貴方、に、よっては誰も……救われることが、ない。
…そして、誰も、貴方を……救え、ない。そう、ただ周囲に……災厄、と、終焉をもたらすだけの、怪物」

「怪物、怪物か。ク、……クク、クハッ!何とも良い響きではないか!
ああそうとも、だからこそ余は比類無き王者として君臨できる!500年の呪縛と妄呪を抱く貴様といえども余を凌ぐ事叶わぬ!」

 哄笑しながら彼は私の頭を足蹴にし続ける。髪はもう乱れきってしまい、ドレスも襤褸襤褸になってしまった。が、今の私にはそれはもうどうでも良いものに感じられた。

 彼の姿に、亡き兄様の姿を見たから。私と兄様の悲願。痛みと虚無を知る彼ならば、きっと。違う形であっても、叶えてくれるのかもしれないと。私の呪縛も、ここで捨て去れるのかもしれないと。―――そう思うと、一筋の涙が……頬を、伝った。

◆あとがき
執筆時間は30分+見易く改行諸々をするのに5分くらい。
ちょっと色々な所から台詞はお借りしています。もうちょっと捻りのある文章にしたいなあとは思うんですが。
あ、文才成長してねえなあとかそんな突っ込みは無しで。

あっ、ちなみに世界征服なんてクラーシェはこれっぽっちもたくらんでおりません。今の地位で十分に御座います。

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