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Re: ヴォルネスク・イン・ザ・ダーク

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なし Re: ヴォルネスク・イン・ザ・ダーク

msg# 1.1
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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2014/6/10 21:47
ゲスト    投稿数: 0

「プリシラとシュオルドレッド」

 プリシラ・アルヴィドソンという童顔の、どこからみても十代半ばに見えるその女性は、レゴリス帝国本国から傀儡国家たるヴォルネスク首長国を統治するために派遣された女性である。
 少なくともそういう触れ込みとなっている。
 問題は南西ヴォルネスクという統治至難なこの地域において、市民に向けた政治指導力などかけらも持ち合わせていない事だ。
 プリシラの役目は看板である。少女趣味のゴシックロリータに身を包んで、舌足らずな口調で話すその少女は、自身と同じように本国から派遣された官僚が作成した文面を暗記して、記者会見にでて、議会で発言する。
 それ以外に仕事などしない。膨大な行政書類にサインやスタンプをするのは首長補佐官であり、現地の軍閥勢力、民兵組織との折衝を行うのもそれらの担当官である。報告書も、新聞もニュースも彼女にとっては縁遠いもの。それを補うように、レゴリスから派遣された閣僚達は優秀だった。「鉱山労働法」「レゴリス人土地法」「産業調整法」をはじめとする各種法律によって、大多数のヴォルネスク人には低賃金所得のみがあてがわれ、利権はレゴリス人と、それに従う一握りのヴォルネスク人のみがそれらの数十倍の所得の恩恵を得た。
 誰もプリシラに期待などしない。そもそも彼女は政治家である前に学者であり、秘密結社レメゲトンに属する魔術師であり、尽きない欲望に餓えた人外の存在であるのだから。

 ヴォルネスクは霊的に汚染されているとゾロアスターの聖職者たちは言った。それは事実である。ヴォルネスクに漂う暗黒の瘴気は、そこに住まう人心の荒廃と腐敗に無関係ではない。
 そこに長く住み、瘴気を吸い込んでいれば、いずれレゴリス人たちもヴォルネスク人のような人屑に等しい存在に堕ちるだろう。
 だが、プリシラにとってはそれは心地の良いもの。夜よりもなお暗いところ。地下街のある一角を研究用の私有地として独占し、プリシラは欲望と興味の赴くままに研究と実験を繰り返している。
「地震や隕石を落とす呪術は実在するのですか?」
妖しげな液体の入ったフラスコやビーカーを傾けて調合していたプリシラに、メイド服に身を包んだ美少女が軽く話題を振る。
「もちろん実在するよ? この星の軌道には無数の岩石が浮かんでいるの。念動力でそれに干渉して落とせば、それは巨大隕石」
 レメゲトンは古来より、数え切れないほどの隕石を落としてきたとプリシラは笑う。
「まあ怖い」。メイド服の少女が笑う。二人とも幼いという形容すらできる少女たち。だが笑みに浮かぶのは邪悪でかつ淫妖なもの。このメイドもまた闇の住人だった。
 プリシラは前触れも無くメイド服の少女を押し倒し、キスの雨を降らせる。響き渡る嬌声。そしてゴシックロリータの中に隠していたぬめる紫色の蛇を見せつけ、鋭い牙を光らせる。
「実験に必要なの。シュオルちゃんの血、頂戴?」
「私の闇の血をご所望とは、どのような趣向…いえ実験でございましょう」
「可愛い女の子をシュオルちゃんと同じにしてあげるの。良かったね。お友達ができるよ?」
 プリシラの蛇が大口を開け、シュオルと呼ばれた少女の首筋に牙を立てる。恍惚とした表情で迎える少女。傷口から溢れるのは赤い血ではなく、男達から奪い取った白濁した何か。この闇のメイドの体内では、それが循環して動いているのだ。
「シュオルちゃん、エーラーンに虐められて随分数が減っちゃったよね。でも安心して。レゴリスから可愛い子たちを喚んでくるから。一緒に楽しもうね?」

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