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ヴェールヌイの報道  ヴェールヌイ社会主義共和国メディアの報道を集約して紹介
5月 21 (木曜日) 2015
【第17号593年1月】特集-成蘭王訪問 12:37  ヴェールヌイ社会主義共和国 


【成蘭王 黒石治家第五代国王陛下、共和国訪問】

かねてより外遊予定が報じられていた成蘭連邦王国第五代国王である黒石治家陛下が、去る592年8月19日に共和国に到着、21日まで滞在し、共和国各所を訪問した。

成蘭国内では、今回の諸国歴訪が現国王の最後の外国歴訪になるだろうとし「とりわけ両国の関係が深い国・思い出深い国」が選択されたと報じている。国王・王妃両陛下は、ティユリア連合王国、ガトーヴィチ帝国、石動第三帝国、レゴリス帝国の四カ国を訪問、我が共和国は各国歴訪最終の五カ国目となる。訪問対象国中、対成蘭関係の歴史は共和国が最も短く、また唯一王室外交を伴わないものである。共和国政府は、首都周辺の工場の稼働停止を指示したほか、期間中の各地訪問に全てスヴィトラーナ議長同志が帯同するなど、かつてない歓迎体制となった。



[19日-首都サンサルバシオン]

初日、首都サンサルバシオンに到着した両陛下は、共和国元首であるスヴィトラーナ議長同志の出迎えを受け、歓迎式典に参加。国家人民軍地上軍衛兵連隊の儀仗兵らを閲兵した。長い海外歴訪の最終段であることから、両陛下の体調に配慮し、市内観光は控えられ、歓迎式典後は共和国宮殿に直行した。共和国宮殿までの沿道には、多くの人民が集まり、両国旗を振りながら「共和国と成蘭連邦の友好万歳」「信頼と平和の純粋社会主義万歳」を叫んだ。共和国宮殿では、スヴィトラーナ議長同志と短い懇談を行ったほか、政府主催の晩餐会が執り行われた。



[晩餐会の乾杯前のスピーチにて]

スヴィトラーナ議長「本来ならば黒石陛下にスピーチいただかなくてはならないところですが、無理をおして最後に共和国を訪問されておられる中、このうえ陛下をここに立たせるようなことがあれば、わたくしは成蘭人民に「なんと不敬なやつだ」と言われてしまうでしょう。(会場に笑いが漏れる)わたくしは長話が嫌いですので、はやく乾杯させていただきたいところなのですけれど、内務大臣によれば、それこそ不敬にも、わたくしよりもこの席で乾杯の音頭をとるに相応しい人物がいると言って聞かないものですから、その方にこの場をお譲りしたいと思います。シベリア友好協会会長として、ヴェールヌイ・シベリア両人民の友好促進に貢献されておられるセルゲイ・イリザロフ同志です。イリザロフ同志、焦っても党の作った原稿はありませんから、観念して出てきてください」

イリザロフ会長「えー、このような形でお呼び出しを受けるとは思ってはおりませんでしたので困惑しておりますが、精一杯挨拶をさせていただきます。さて、私の父はシベリア共和国の最後の産業大臣であるドミトリ・イリザロフでございます。ちょうど今から約27年前に、祖国が突然失われたということは今にも記憶に新しく、そして今も望郷の念で胸がいっぱいであります。シベリア人はFENA圏を含めて、様々な国に散らばってしまいました。私が普段勤めております友好協会はそのシベリア人のネットワークを可能な限り維持することを目的としています。今回、シベリア共和国の友好国であった成蘭国王陛下の各国訪問は、世界にいるシベリア人の結びつきを再び強固なものすると確信しております。それでは成蘭連邦王国、我々シベリア人の第二の祖国であるヴェールヌイのさらなる繁栄を祈り、乾杯!」



[20日-グムラク]

訪問二日目は、両陛下はグムラクの工場群及び港湾一帯を視察した。グムラクは共和国最初期に造成された工業地帯であると同時に、初の貿易港設置地帯である。共和国が、その歴史上初めて定期交易の契約を行ったのが成蘭であり、これはグムラクが貿易港として発達を遂げる原動力となった意味で、縁のある地域だと言えるだろう。この燃料輸出は、同国で燃料需要が減少してからも、黎明期の貧弱な共和国経済に与える影響に配慮する形で継続された。後に、共和国はFENA準加盟国となり、幾度の輸出量やレートの改定を経て、両国にとっての意味合いも変化を遂げているが、その枠は途切れること無く現在も維持され続けている。スヴィトラーナ議長同志は、両陛下を案内しながら「このグムラクで、両国経済の歴史を思い起こすと、今まさに成蘭で燃料需要が高まっている中、私たちが輸出量を拡大することもせず、恩に報いることが出来ない事を大変心苦しく思っています」と述べ、対して黒石陛下は「ヴェールヌイの経済発展モデルは国際社会の範たるものそのものであり、ヴェールヌイ、成蘭がともに健全な経済成長を継続することを願うばかりである」と述べ、共和国の社会主義自主経済体制に理解を示した。



[21日-ノヴィ・ノヴォシビルスク(シベリア人自治区)]

最終日、両陛下はベイクラント島シベリア人自治区を訪問した。これは共和国側の提案に含まれていなかったもので、成蘭側の強い希望により実現したものであった。自治区内の中核市であるノヴィ・ノヴォシビルスク郊外にある「シベリア共和国の原子力災害犠牲者の碑」(シベリア追悼碑)を訪れた黒石陛下は「シベリアを襲った原子力災害の被災者に対し心からお見舞い申し上げる。例え、シベリアが国家ではなくなったとしても、彼らが我々にとって素晴らしい友人であることには変わりない」と述べ、追悼碑に献花した。続き、共和国政府名による献花、黙とうが執り行われた後、スヴィトラーナ議長同志による追悼の文朗読と演説が行われた。

「祖国を失った全てのシベリア人と、全ての犠牲者に哀悼の意を表します。いまより27年前、565年6月にシベリア共和国は失われました。共和国建国一周年まで一ヶ月という時のことで、わたくしがちょうど9歳の時です。建国間もない当時、共和国全土は貧しい農村のみが存在するばかりで、物資も、それを扱う知識も不足しておりました。いくつかの国々から支援を受けましたが、その中でも一番早く、そして多くの物資援助と、国際協力隊の派遣によって各種のノウハウを私たちに与えたのは、シベリア共和国でありました。共和国全土が貧しいものでしたが、わたくしの故郷であるバイウリェーニャは、全国で一番に貧しい村でした。村の皆が「社会主義による組織的農業を打ち立てよう!」のスローガンのもと日夜努力していましたから、幼かったわたくしも、外で手伝いをすることが多かったものです。冬はとても寒いので、凍えて動けなくなったこともありました。ある日、協力隊の若い青年が、そんなわたしに手袋をくれました。幼い私は、恥ずかしくなって「ありがとう」のひとつも言わず、ただそれを受け取った記憶があります。それからしばらくしたある日、協力隊が私たちの村から引き上げることになりました。撤収式で、その青年を見つけた私は、彼に駆け寄ってお別れの花を手渡しました。彼は「おじょうちゃん、強く生きて、よく家を手伝うんだよ。みんなで助け合えば、いつかきっといい国になる。だから頑張るんだよ」と・・・鮮明に覚えています。彼を含め、協力隊の殆どの方が泣いていた理由をちゃんと理解できるようになったのは、もっと先になってからのことでした。時に、ヴェールヌイはシベリアの血を吸い、その骸の上に立っていると、皮肉をこめて仰られる方がいます。わたくしは、これは皮肉ではなく、誠にその通りだと思うのです。シベリアは、共和国の体を流れる血の源流なのですから。そして、いまこの場に、成蘭連邦王国の黒石陛下がおられますことも、とても大きな象徴的意味合いを感じずにはいられません。シベリア共和国の消滅がなければ、共和国と成蘭連邦の国交締結はもっと遅いものであったでしょうし、現在のような友好関係が築かれることも無かったかもしれません。両国友好は、シベリア共和国が我々に残した最大の財産であり、これを一層、維持発展させることが、亡きシベリアへの最大の鎮魂になると、そう信じております」



[帰国~両国友好を再確認]

全日程を終えた両陛下は、首都サンサルバシオンに戻り、帰国の途に就いた。黒石陛下は帰国前のコメントで「政治思想や体制が異なるとしても、両国が平和友好の精神を忘れなければ関係はより一層プラスの方向に親密になることでしょう」と述べた。スヴィトラーナ議長同志は「退任を2年後に控えるわたくしにとっても、おそらくこれが最後の大きな仕事だったのだと思います。いずれ王国を旅行しにいきます」と応えた。今回の成蘭王による諸国歴訪は、共和国にとっては、初の国家元首相当の訪問受け入れの経験となり、また成蘭連邦との友好親善はもちろん、消滅から間もなく30年を迎えようというシベリアの記憶を呼び起こす大変意義深いものであった。



(本記事は成蘭連邦王国並びに旧シベリア共和国によって実際にコメントを取得し、また全文の校正を受けている/写真は成蘭王到着を待つ成蘭旗を持った儀仗兵と歓迎の為沿道詰めかけた市民ら)
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