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ヴェールヌイの報道  ヴェールヌイ社会主義共和国メディアの報道を集約して紹介
2月 25 (水曜日) 2015
【政治】混迷のフラン情勢 【外交】ノホ・ヘレコ連邦と治安維持協定 ほかオマケ 21:15  ヴェールヌイ社会主義共和国 
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【Рабочий победа 】労働者の勝利(第7号577年12月)

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◆紙面

【政治】混迷のフラン情勢 共和国にも責任の一端

【外交】ノホ・ヘレコ連邦と治安維持条約締結へ

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◇混迷のフラン情勢 共和国にも責任の一端

共和国の国外開発事業のモデルケースとすべく、巨費が投じられたフランドル・フランセーズ。鉱脈探査における労働者弾圧等の人権抑圧問題が記憶に新しいが、現在は当初の開発目標を達成し、順調に天然資源の採掘が行われ、期待通りの成果をあげている。フランはこれを元手とし、既に数か国と海外交易を実施、大国との定期交易も纏まるなど、経済において自立を成し遂げつつある。今後、我が共和国にとって、相互扶助関係を構築すべき対等な立場の友好国となることが強く期待される。

しかし一方で、経済発展と、共和国支援による国土の拡張、人口の増加は、急速な治安の悪化をもたらしており、国内統治の経験が浅いフラン政府は、適切な対応を執れていないのが現状である。前述のように、経済収支は確実に上向きであろうはずにも拘らず、改善策実行に係る予算が一定期間にわたって無い状況が続くなど、財務管理も杜撰の一言だ。結果として、もはや不要と結論していた追加での財政支援を、状況を見かねた諸外国が行ったことは、共和国政府として重く受け止めるべきである。またミッドガルド帝国により行われた財政支援の大半が、現状に不満を唱える国民を更に抑圧する一時凌ぎに費やされたことは、残念と言わざるを得ない。早々に民主化を志向したフラン政府の勇気と正義は、大いに支持声援されなければならないが、その実態は、それが確かなロードマップ無しに行われた愚策としてのみ評価されても致し方ない状況だ。共和国政府は、開発協定の目的、すなわち「途上国を早期に政治経済的に自立せしめ、もって世界経済の底上げを図り、広範な国際貢献とする」に今一度立ち返り、フラン政府を携えるべきだ。さもなくば、共和国の国益を損ねるのみならず、フランと交易関係をもつ諸外国及び、支援に踏み切った有志国家を落胆させることとなるだろう。

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◇ノホ・ヘレコ連邦と治安維持協定締結へ

ノホ・ヘレコ連邦は574年に建国されたばかりの、7つにも及ぶ部族からなる連邦国家であり、建国当初より共和国とも交流がある。開発途上の時期にあると同時に、資源面でハンデを背負って生まれた事で、ノホ・ヘレコ人民の闘争はその困難さを増している。そのような状況にありながらも、彼らは自らが持つ聡明さ勤勉さにより、冷静に民族と国家の将来を見据え、準備を怠らない。

577年11月、共和国はノホ・ヘレコ連邦の要請を受け、必要な期間中、当該国の治安維持に関し一定の役割を担うことで合意に達し「ヴェールヌイ・ノホ・ヘレコ治安維持協定」を締結した。協定発効に伴い、現状の調査及び連絡要員として、国家人民軍より担当官が派遣される見通し。

マルシャーク外相は調印式後のコメントで「フランにおける開発事業に続き、我が国の持てる能力を途上国の発展と安定の為発揮できることは光栄なことであり、共和国の党と人民はノホ・ヘレコ人民の国家建設における闘争を支持声援しつづけることだろう」と述べた。

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製作-労働党広報部 監修-労働党政治局

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↓(チラシの裏)



化学工業省 庁舎5階 産業統括部 均等施政管理課

「今朝の新聞読んだか?」

ギンツブルクはぶっきら棒に言った

「党機関紙のことですか?ギンツブルク同志が機関紙の話題を口にするなんて、余程暇なのか拷問でも受けたんですか?」

ギンツブルクの部下であるクルツは茶化すように言った。他の上司と違い、ギンツブルクは「堅」くないからこそ許される反応であり、クルツもそれを承知していたし、彼自身、そうやって反応される方が気が楽なのだ。

「馬鹿言え、南部ではじめての都市現代化が始まった直後だ。お前は七時には帰れるだろうが、俺はそうもいかんのだぞ。昨日だって党委員の―」

「同志、それでその新聞がどうしたんですか」

クルツの被せに、ギンツブルクは一拍間をおいた後、ため息まじりに続けた。

「フランの記事だよ。こりゃなんだ。『交易関係をもつ諸外国及び、支援に踏み切った有志国家を落胆させることとなるだろう。』って、いつから共和国はそんなに偉くなったんだ?」

「そうは言っても、当初より安定してきたとはいえフラン人は何をしでかすかわかったものじゃないじゃないですか。巨額の費用がかかってるんです。もとより回収するつもりはなかったにせよ、国体が維持できないような事になれば我が国の恥です」

「だからさ、そもそもその考え方がいけない。当初の目標は達成して、こっちに鉄鋼だって搬入されはじめてるし、フランが豊かになる土壌もできた。十分だよ。もううちがとやかく言う段階じゃない。それなのにこれではまるで体の良い勢力拡大策みたいだろうが」

「まぁ・・・けど国際貢献なんですよ。崇高じゃないですか?なんちゃら食らわば皿までって言いますし」

クルツの返しに、ギンツブルクは大げさに眉をしかめて見せた。

「国際貢献ってお前なぁ・・・資金をジャブジャブ垂れ流してるような先進国ならいざ知らず、うちみたいに貧乏な途上国がそんな事できるわけないだろうが。ノホ・ヘレコの件もそうだ。軍事同盟ではないにせよ、あれは立派な軍事援助だろう。軍にはそんな余裕も無いし、だからといって、どうせ国防費は増額できない。軍務省も反対だったらしいが、ありゃあ見栄で無理したようなもんだ。飢えはしなくなったにせよ、人民の生活はまだまだ貧しいだろ。国内の課題に粛々と取り組んでいかなきゃならん時期なんだよ」

そこまで言って、ギンツブルクは胸ポケットから煙草を一本取り出し咥えた。

「実に愛国的だな同志ギンツブルクくん。保衛省に出向すしてその愛国心を更に磨く訓練を受けたらどうだ?」

クルツの声とは違う、明らかに野太く、若干の怒気をはらんだ声が背後からこだました。ギンツブルクはギョッとして振り返る。

「あ、ああ。こ、これは大臣閣下!こんな部署にわざわざ直接いらっしゃるとは!内線いただければ飛んで参りましたのに!」

ギンツブルクは咥えた煙草をデスクに放り、おもむろに席から立ち上がって即座に頭を下げた。クルツは合わせて礼をしたあと「私は仕事がございますので!」と言い放ち、そそくさと自分の席に帰っていった。

大臣と呼ばれた恰幅のよい男はしばらく険しい顔をしていたが、ギンツブルクのあわてぶりに「フッ」と息をもらし、口元を緩めた。

「顔を上げたまえギンツブルク同志。冗談だよ。私は信任先の部下をMнBに引き渡したりはせん。しかし、よく気をつけたまえ」

「は!ありがとうございます!」

答えるギンツブルクはなおも頭を下げたままだ。

「時に、君のいうことは正しい。だからこそ君にぴったりの仕事を持ってきたのだ」

化工相はそう言うと、背広の内ポケットから四つ折りになった紙を取り出し広げ始めた。

ギンツブルクは恐る恐る頭を上げ、取り出された紙に目線をよせた。

「これを仮のものだがね、追って正式に辞令があるだろう。読むぞ、『共和国閣僚評議会は、偉大なるヴェールヌイ労働党の領導とその方針に基づき、社会主義祖国発展と―』長いな、この辺は飛ばそう『タマラ・ギンツブルク、化学工業省代表官として海外視察任務を命ずる』」

「か、海外視察ですか?」

「君のような危惧を抱く人間は、幸いなことに党内にまだそれなりに居るのだ。しかしそれも、ノルシュテイン同志が退任となればいつまでになるかわからん。国内で成果を得れば、海外政策にも良い影響が出よう。共和国にたりないものは知識と経験だ」

海外渡航が厳しく制限されたヴェールヌイでは、中央官庁職員でさえ、その機会は少ない。海外視察の代表官は羨望の的であり、事実出世コースでもあった。しかしそれでも、ギンツブルクの心は躍らなかった。仮に渡航が許されたとしても、今や衰退著しい所謂社会主義圏とされる国々か、自国以上の途上国に限定されたようなものだったからだ。そして話の内容、目的からして、今回はレゲロしかないだろう。目的に適した国であるのかは甚だ疑問ではあるが、共和国の外交範囲からいって、それが限界であり現実なのだ。

「光栄です大臣閣下・・・しかしあの、視察先はどこなのでしょうか」

表情でわかるのか、はたまたニュアンスが正直すぎるのか、ギンツブルクの問いに化工相は苦笑いした。

「政府から直々に海外視察任務を命令されているのに、君はなんだか不満がありそうだな。良いんだ、だからこそ君を推薦すべきだと聞いていたからな。その通りのようだ」

「はぁ・・・どういうことでしょうか」

「これを見給え」

いやに勿体振るものだと思ったが、手渡されたもう一枚の紙に目を通した刹那、ギンツブルクは目を疑った。

「『貴国視察団の派遣要望に対しこれを認め・・・クシミニャール献酌府』く、クシミニャール侯国!?」

「他国資本による急速拡大と警察国家化、そして民主化からさらなる飛躍を遂げた準先進国だ。共和国の現状を鑑みて、もっとも視察先に相応しい国だ。ギンツブルク同志、世界を見てきたまえ」

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