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Re: カル=シスマの赤い花

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なし Re: カル=シスマの赤い花

msg# 1.1
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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2015/9/4 23:40
ゲスト    投稿数: 0

【エーラーン調査団員の手記】

私はマーガベル共和国への調査に向かうことになった。

そう。
気の弱い女性はその地名を聞いただけで卒倒してしまうというあのマーガベルである。
マーガベルへ行く方法は一つしかない。
ノイエクルスのどんづまり、ネオ・ヴォルガからローカル線に乗って無人の雪原を三日三晩走りぬける。
すると目の前に人間が住んでいるとは思えないほど荒廃しきった炭鉱街があらわれた。
ここがマーガベルの首都ナルシェである。

「まだフリューゲルにこんなところがあったのか…」
思わず口に出てしまった言葉を、同行した主教から失礼だと咎められた。
獣の皮を幾重にもまとって防寒着とした住民達が遠巻きに私たちを見ている。
外は豪雪、気温は零下五度。我々は暖かい時期に来れたという。
ここまでの汽車の旅で、農耕地帯といったものはついぞ見えなかった。
遊牧という言葉もおこがましい狩猟採集の生活。
ノイエクルス連邦が放置していたのも頷けよう。
少なくとも凍死することはない南西ヴォルネスクと、果たしてどちらがよりましであろうか。

案内役の老人の、非常に訛りの強いロシア語を何度か聞き返しながらこの国のことを話しかける。パチパチと、石炭ストーブからの音が聞こえる。石炭。彼らをここで今まで生きながらえさせてきた黒いダイヤ。だが原子力発電が主流のこのフリューゲルでは、それらは黒い石程度の価値しかないのだ。

「お初にお目にかかります。教皇庁のみなさま」
全く場違いな、完璧な造形を持った人形のような美女が、マーガベルに欠片も縁のなさそうな優雅な乙女が、ルーシェベルギアス風の赤いドレスの裾を摘んで一礼した。
「レティシャ・ゼストーキーソーン。夢魔です。以後お見知りおきを。歓迎致しますわ」
「お目にかかれれたことにマズダー神と偉大なる熊に感謝を。…あの書簡は貴女が?」
「はい。ペルシャ語ができますのは、この国にはわたくししか」
おりませんので。と、姿に恥じない美声と、完璧な発音を持って我々の言葉を話す。
…只者ではないのはすぐに解った。気付かざるを得ない。彼女には影がない。
主教をちらりと見る。主教は気付いているのかいないのか、たわいのない社交辞令から、土産物のエッサーの茶器を手渡し、代わりに彼女をモデルとしたマトリョーシカ人形を受け取る。
意気投合したのか、主教と彼女はこの国の気候から、茶葉の流通、宗教事情、政治事情、ノイエクルスの関係…そしてパリーサー慈善修道会の活動や神学談義にまで及んだ。

「相当高位の魔のモノですよ。あれは」
深夜、主教がそう私に言った。
「…では、サザンベルク公国のように?」
「いえ、無差別に人を襲う性質ではない様子。それに光石は最後の手段です」
「美しい悪霊、という印象でしょうか」
「そうですね。まずは、相手の出方を伺いましょう」

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