オルザス会談

フリューゲル暦510年2月4日

クラーシェ誓約者同盟・オルザス共和国のシュトッテルンハイム古城にてクラーシェ誓約者同盟シャルル・リュシー・オルレアール皇帝と
日ノ本帝国ツクヨミ帝の間で非公式の会談が執り行われようとしていた。

※関係国はこのスレッドを使用して下さい。

クラーシェ誓約者同盟より、選帝侯の総代としてシャルル・リュシー・オルレアールが出席する。

……日出づる国の帝殿か。非公式かつ状況が状況である故に、ようこそ、とは言えぬ。
事実、歓迎はしていない。
が、日ノ本に帰国するまでの御身の安全くらいは保障しよう。用意されている料理に毒は無いゆえ、安心して食されよ。

堅苦しい話や回りくどい話は好まない故、単刀直入に……講和に関する事であったか、口上を聞かせて貰いたい。

日ノ本帝国より、代表としてツクヨミが出席致します。

西方の偉大なる国を治めるシャルル皇帝陛下のような方に相対し、会談させて頂けること嬉しく思います。
では、お気遣いに甘えて・・・。
こたびのケーニヒスベルク事変に関しまして陛下のお怒りの心中の程を察し、私自らお詫びを申し上げに参りました次第です。
無論、ただ謝罪と申しましても、言葉だけでは陛下の御心に届かぬだろうと思われましたので、出来る限りの「誠意」を用意致しております。またそれとは別にケーニヒスベルク大公殿下の釈放も行うことを約束します。
その代わり、陛下に望むことが三つあります。
一つ目は、日ノ本を国家として承認すること。
二つ目は、ケーニヒスベルク事変における責任を問われない形で和約を締結すること。
三つ目は、ケーニヒスベルク大公国の租借権を認めて頂くことです。
以上を叶えて頂けるのであれば私としては異存なく、貴国と友好関係を契りましょう。

「誠意」……なるほど、確かに誠意を用意して来られたようだ。

簡潔に述べよう。
一つ目は簡単な事。ケーニヒスベルク……それでこの問題は片付く。

二つ目は無理というものがあるだろう。
国交も締結していない国の船が許可なく領海に侵入しようとすれば、それを排除する事は主権国家として至極当然のこと。
にも関わらず、こちらに非があると言わんばかりの主張を行なった挙句、ケーニヒスベルクを占領し保護国に置くなどの勝手放題の狼藉。
本来であればミサイルを貴国全土に放つ所だが、それをしないだけ有難く思って欲しいというものだ。
が、この問題は簡単に片付く。至極簡単に。とある物をこちらに渡せば良いこと。お分かり頂けるだろうか？

三つ目は以下の租借に関する条約文を外務省の担当者に作成させた。目を通して欲しい。

オルザス租借条約

前文
クラーシェ誓約者同盟及び日ノ本帝国は、善隣関係及び主権の相互尊重の原則に基づく
両国間の関係の正常化に対する相互の希望とを考慮し、この租借条約を締結することに決定し、
よって、その全権委員として次のとおり任命した。

【クラーシェ誓約者同盟】シャルル・リュシー・オルレアール帝
【日ノ本帝国】ツクヨミ帝
これらの全権委員は、互いにその全権委任状を示し、それが良好妥当であると認められた後、次の諸条を協定した。

1.日ノ本帝国政府はルセナール議定書において明らかに示されている通り、
ケーニヒスベルクにおける統治権を有する国家をクラーシェ誓約者同盟と認める。

2.クラーシェ誓約者同盟は本条約の発効からフリューゲル暦610年2月迄の期間、ケーニヒスベルクを日ノ本帝国に貸与する。

3.日ノ本帝国はクラーシェ誓約者同盟政府が派遣するケーニヒスベルク監察官を受け入れ、内政状況の監察を行なう事を認める。
付帯条項：租借期間中、日ノ本帝国はケーニヒスベルク監察官がクラーシェに内政状況の報告を行なう事を合法的な物として認める。

4.日ノ本帝国はケーニヒスベルクに防衛施設を除く軍事に係る如何なる施設も設置してはならない。
但し両国の合意がある場合にはその限りではない。

5.ケーニヒスベルクが攻撃を受けた場合、その防衛義務は日ノ本帝国が負うものとし、
クラーシェ誓約者同盟とその安保締結国は防衛の義務を負わない。

6.租借の代価として、日ノ本帝国はケーニヒスベルクで生産される軍事物資を定期的にクラーシェ誓約者同盟に輸送する義務を負う。

7.本条約は批准書の交換によって効力を生ずる。条約の発効日時は批准書の交換時とする。

以上の証拠としてそれぞれの全権委員はこの条約に署名調印し、フリューゲル暦510年2月3日オルザスで
等しく正文であるクラーシェ語、日ノ本語及び国際公用語により本書二通を作成した。
解釈に相違がある場合には、国際公用語の本文による。

……以上だ。疑問点があれば答えられる範囲で答えよう。

ええ、用意した物は陛下にもご満足いただけるでしょうから、御心配なさらず。

こちらとしても高い望みをしていたようですので、二つ目は取り下げましょう。日ノ本が国として貴国とお付き合いが叶うと言うことだけでも素晴らしいことですので。
租借について条文を一通り読みましたが、特に異存はありません。

ツクヨミの名において署名致します。

…成程、確かに「受領」した。

国交に関する話は後々貴国に大使を派遣する故、貴国も我が国に大使を派遣されたし。
租借条文についても異存無いということで一先ず安心した。

シャルル・リュシー・オルレアールの名において調印し、批准書の交換を行った事を確認。
条約の効力に基づき、510年2月3日から610年2月迄の間、ケーニヒスベルクの租借権を日ノ本帝国が獲得する。

……とりあえず一段落といったところだろうか。これ以上議題が無ければ、会談はこれにて切り上げとなる。

…そうだな、後は世間話ではあるが、我が国のファッションブランドの一つ、
「和蝶邀月」が貴国での事業展開を希望している故、そちらで検討して欲しい。

国際情勢はドクツやイタリン等という勢力が近年増長してきている。烏滸がましくも帝国を名乗っているようでな。
帝国は幾つも要らぬ。
レゴリスやミッドガルド、ガドーヴィチや大幹、ポートランド……後は、貴国くらいで十分といいたいところだ。覚え切れぬよ。
世界も少々人が増えすぎた。少々、掃除が必要やもしれぬ。……兎角、不穏な情勢だ。貴国も十分警戒されよ。