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『ロマノス・フォカス公爵記』 Epi.1

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なし 『ロマノス・フォカス公爵記』 Epi.1

msg# 1.1
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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 | 投稿日時 2013/10/2 23:08 | 最終変更
ゲスト    投稿数: 0

Episode 1  アクアマリンの雨

 ぽつり。
 アクアティアラの路上、大学帰りの若い男が空を見上げる。
「今夜は雨が降りそうだな……」
 彼は家路を急いだ。

 ロマノス・フォカス。カレスティアの名門公爵家の長男。

 物静かで穏やかな彼がアクアマリンへの留学を希望したのは、アクアマリンの元首リエラ・エアリーヌ少女王がティユリアへ来訪したことがきっかけだった。
 端的に言ってその時に彼はリエラに恋をしたのだが、名門の出で世間知らずの18歳は、そのような感情を知るはずもなかった。いままでに経験したことのない感情、けれども温かく優しい感情――。

 家風は厳格、名誉を重んじる公爵家。
 カレスティア女王エイレーネ1世の妹セオドラが嫁いだのが、ユリウス王国の家臣から興った名門フォカス公爵家だった。彼はそのセオドラのひ孫にあたり、現カレスティア国王と遠い血縁関係にある。
 父はアクアマリンへの留学を快諾してくれた。

 雨は彼が寮にたどり着くよりさきに大降りとなった。
「天気予報じゃ晴れだったんだけどねえ」
 寮母はずぶ濡れになったロマノスにタオルを渡しながら、声をかけた。
「天気予報といっても、占いみたいなもんだけどねえ。あなたの母国じゃあ、気象衛星を使ってちゃんと当たる予報をしてくれるんだろう?」
「それはまあ……」
 言葉に詰まる。アクアマリンではミサイルはおろか、ロケットの打ち上げすら行われていない。気象衛星ぐらい先進国ならどこでももっているものだが、それを打ち上げる技術すら持っていないのだ。正確に言えば、持とうとしていないのだ。

「いま温かいコーヒーを入れてあげるからね」

 ふと窓から外を見ると、空一面に黒い雲が広がっている。
 雨はやみそうにない。

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