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『ロマノス・フォカス公爵記』 Epi.2

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なし 『ロマノス・フォカス公爵記』 Epi.2

msg# 1.1.1
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2
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2013/10/2 23:10 | 最終変更
ゲスト    投稿数: 0

Episode 2  雷鳴とともに

 窓に打ちつける雨粒――その日も雨だった。

「……左様でございますか……確かに……」

 雨音に混じり、遠くに雷が光った。

「ええ……それは承知しております。ですが……それほどの大役を……ええ……わかりました」

 しわだらけの顔の老人は受話器を置き、白髪の頭を抱えた。

 ――果たしてそのような大役が務まるだろうか。
 息子、ロマノスはアクアティアラに留学したことがあり、その内情に通じているかもしれない。アクアマリン王室とも交流がある。しかし、この役目は重すぎるのではないか……。

 一瞬にして昼間のように明るくなった書斎。
 雷鳴が響く。

 老人は受話器を取り上げ、女中を呼びつけた。

 ◆

「ロマノス、答えは出ているな?」
 白髪の父は息子に問うた。
「はい」
 息子は父の顔を見る。

「よろしい。では早々に準備をしなさい。政府には私から連絡を入れておく」
 受話器に近づけた手を止め、息子の目を見る。

「いいか、一週間もすればお前はこのカレスティアという国を背負っている」
「ひとつの国が、数千万の臣民の命がお前の肩に乗ることになるのだ。そして」

 一瞬言葉を切った。

「この公爵家を背負うのだ」

 そのとき、雷光が書斎を照らし、しわだらけの父の顔を脳裏に焼きつけた。
 遅れた雷鳴が書斎の窓を揺らした。

 ――ロマノス・フォカス公爵殿下を在アクアマリン・連合王国特命全権大使に任ずる。

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