石動第三帝国・エルツ帝国間首脳会談

足利晶子「なるほど、では我が国からは物流・交通関連の企業をご紹介すればよろしいでしょうか？ほぼ全ての主要先進国への国際便を持つAIAこと全石動空輸、我が国の貿易から旅客海運までを一手に担い、ほぼ世界中に航路を持つ名和海運、これらの企業との連携をお勧めいたします」

ネグローム「喜ばしい限りです。帝国は西方諸国家とは交流がありますが、石動をはじめとした東方国家とはあまり交流がありません。エルツ国民が東方へ行くための出発点としても、貴国企業の力は大変必要となるでしょう。これで西の大国エルツと東の大国石動の間で海を越える大きな橋がつながる事でしょう。

さすれば、次はその航路を守るためにも、両国を守る勇士達の連携も必要ではないでしょうか？帝国は貴国との間において企業だけでなく軍同士の連携も結べたらと考えています。手始めに両国の士官学校に教官を派遣するというのはいかがでしょう。貴国海軍はその歴史が古くまた、帝国の海兵の間では人気が高いといいます。

これからの国家を守る若き勇士たちの交流どうでしょう、素晴らしくありませんか？」

足利晶子「なるほど、素晴らしいご提案ですね。これを期に両国の軍事交流を深めるのも良いことでしょう。

ただ、少々気がかりな点がございまして、我が国の海軍筋の間で、貴国の公開情報におけるアルカディア級駆逐艦・ハルディア級駆逐艦・イスカリオテ級巡洋艦の三艦種の画像が、少なくとも530年代以降から就役している我が国のおきながたらしひめ級重巡洋艦・とよたまびめ級重巡洋艦・やまとひめ級重巡洋艦に瓜二つだという話が取り沙汰されております。
私も確認しましたところこれらの画像は艦影・艦種番号からしても我が軍のおきながたらしひめ級CG-176「あすかべひめ」・やまとひめ級CG-115「やまとひめ」・とよたまびめ級CG-177「とよたまびめ」そのものの様でして、海軍筋では「画像の差し間違いではないのか」との声も上がっているのですが、もしそうでないとすれば…この様な場でこの様な話を口にするのは些か気が引けることではございますが…真偽は如何様なのでしょうか？

なお、我が軍艦船の艦影と艦番号はこちらからご確認いただけます。」

ネグローム「貴国の快い合意を戴けて何よりです。

軍艦の件に関してですが、私は軍事には疎いのでよくわかりませんが、高度に先進化された兵器はその外見が似通るということではないのでしょうか。そもそも駆逐艦と重巡洋艦の時点で艦種が違うので別物なのではないでしょうか？

逆に言えば、それほどまでに両国の軍艦に対する設計思想が似ているということなのでしょうね。つまりわが両国には思想の点でも共通点があるということです。

如何でしょう？帝国には世界に誇るグロリアーナ学園があります。この学園はレゴリス、ストリーダ、アルドラドなど世界中の国家から留学生が集まっています。貴国からも帝国へ留学生を派遣されてみませんか？
世界のあらゆる頭脳の先駆者が集まるグロリアーナへ是非」

足利晶子「なるほど…専門外のお方にお話を振ってしまったようで、失礼しました。
ただ、艦船においてはどれほど技術の進歩による画一化で設計が似通うとも、設計思想はもちろん装備・艤装・技術力・建造方法などから千差万別の差異が生じるはずでして「寸分たがわず瓜二つ」であるというのはありえないという点はご理解頂きたいのです。本当におよそ60年後に建造された貴国の艦艇が我が国の艦艇の設計と寸分違わないという状態であるとなると、残念ながら我が国海軍筋、ならびにこれらを設計した企業にとって、貴国のイメージは大きくマイナスとなってしまう事でしょう…。我が国の重巡を設計・建造しているタグチ造船の経営陣はこの件について「もし事実であれば法的処置も辞さない」と息巻いている始末でして…。私としてもあまり国家間で事を荒立てる事態は望ましくないとは思っていますが、こればかりは私を以てしても抑えきることはできないでしょう…。

留学生については、大いに結構かと存じます。希望者が居るようでしたら後日連絡致しましょう」

ネグローム「確かに『寸分たがわず瓜二つ』の船などあり得ないでしょう。私は大学時代に船舶を管理したことがありますが、たとえ同じ鋼鉄、同じ技師が作っても、気候、管理の影響でわずかながらに差が出てしまいます、そしてその差がまさにその船ごとの違い、として認識されるのですから。

と、専門外どころか軍隊に関しては皇帝陛下の権限ですので、この場でいきなり私が口を出すべきではありませんね。留学生の件に関してですが貴国の賛同を承りました。すぐ学長に話を通しましょう。
私からの話は以上ですが、貴国から何かありますでしょうか？」

足利晶子「特にはございません。この度は首相選挙を控えたお忙しい中我が国をご訪問くださり誠にありがとうございました。世襲の座に安んじている私は残念ながら選挙戦の辛苦を存じ上げませんが、閣下のご健闘をお祈り申し上げます」

ネグローム「応援ありがとうございます。この大きな手土産をもって選挙戦を勝ちたいと思います。

両者ともこれ以上話はないようですので会談を終わらせていただきます。お疲れ様でした。