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夢のあと
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夢のあと (ゲスト, 2016/4/20 22:23)
- Re: 夢のあと (ゲスト, 2016/5/2 21:27)
「天安51年(565年)4月1日、国際スポーツ大会ここに開催さる…」
草に覆われ無人となった廃墟に佇む若いスコッチランド軍の軍服姿の男女。ともに歳は20代前半だろうか、男のほうは少し小柄だが精悍な顔立ちをしており、女のほうは亜麻色の髪を腰のあたりまでのばし、前髪をくるくるといじりながら目の前にある石碑の一文を口にしていた。
階級章を見れば女のほうが階級が上であることがわかる。
「レーダー大尉、いいんですか?調査するにしてももう少し人員増やしたほうが…」
レーダー大尉と呼ばれた女は不機嫌そうに振り向かずに少し怒気を強めながら答える。
「二人もいれば十分よ。それに配慮の足りない荒っぽい連中を入れたら遺跡爆破とか言い出すかもしれないでしょ、フォード少尉?」
確かにそうかもしれないがそうではないだろといいたいがこの人と口論になっても勝てない。そのことをこのフォード少尉は知っていた。なのでそれ以上は何も反論せず「はいはいわかりましたよ」と言わんばかりに肩をすくめたのであった。
ここは旧大和寧帝国の主要都市だった仁河の大競技場跡である。長井年月を経てはいるが遺構はほとんど残っており、当時莫大な予算を投じて建設されたスタジアムは往年の威厳を80年の月日を経ても保ち続けている。
647年11月10日、萬和戦争でこの地を占拠したスコッチランド人民軍北部方面軍第31師団は旧大幹帝国時代の遺跡の保存などを同盟中央政府から指示されていた。今回二人がこの地の調査に来たのはその一環であり、特に大和寧史に詳しいこのリザ・レーダー大尉が調査員として志願したのである。
「国際スポーツ大会といえばここ100年で3回しか開かれていない大会ですよね?」
長い沈黙の後に男が口を開いた。女は手元のメモを手にしながら何やら懐かしいものを見るように石碑の埃を払いつつ、しかし決して気が抜けたような表情をせずにそれに返答した。
「7年前にエルツ帝国で行われた第3回が直近ね。その前は…忘れたわ。忘れるくらいマイナーな国でやったんだっけ?第3回のもかなり予算を取って開催されたらしいけど、この第1回はかつてないほどの賑わいだったらしいわ。当時の映像がこれね。」
開会式の様子。中央の貴賓席から開会宣言を読み上げる恰幅のよい老人が映っている。当時の大和寧皇帝朴世成、その隣で誇らしげにしているのが国際スポーツ大会の呼びかけ人であり当時の首相の丁純憲と伝わっている。貴重な歴史的映像である。
映像が一通り再生され、その当時の場所と現状を比較して少しため息をついたレーダー大尉は何かを考え込むような表情をしていた。
「この大会から20年もしないうちにこの国は滅んだ。どんなに栄えた国もいずれは廃墟に消えていく、戦乱や貧困、あるいは自然分解とか、いろいろあるけど、永遠に存在できる国なんてあり得るのかしら。国破れて山河在り。偉大な国家が存在したという証が残っているだけでも十分すごいと思うわ。」
そう言い残して、数枚の写真を資料として撮影した後すぐさまこの地を去った。
スタジアムの傍らには一輪の無窮花がひそかに咲いていた。
~完~