事件が起きたのは545年10月6日、室満京市中央区内務省通りの交差点でのことである。開発中の八輪装輪の戦闘装甲車のテストを行っていた直参親衛軍の土岐頼亨親衛少将と陸軍の二階堂幸治直少将の二人は、同車両の有用性について試験場で口論となり、「続きは飲みながら話そう」などと言って新型装甲車に乗って歓楽街へ繰り出し泥酔。「二軒目行くぞ」などと言いながら交差点を装甲車で蹂躙しメインストリートの交通を遮断してしまった。

（写真）開発中の装甲車の画像（提供：陸軍省）



　この騒動に車での移動中に鉢合わせた孝寧君太上皇婿陛下は、警護の近衛兵に露払いを指示。バイクで二人の装甲車に近づいた近衛兵は「院のお車が通られる。道を開けよ」と警告した。



　これに対し二階堂少将はすぐさま装甲車から下車し最敬礼したが、土岐親衛少将は運転席から降りようとせず、「あ？院言うた？犬言うた？なんでわしが犬に下車せんといけんのんなぁ！」と叫んで突如装甲車を孝寧院陛下のお車の方に走らせ、車を踏み潰してしまった。幸い孝寧院陛下と同乗の従者、運転手らは間一髪下車し、運転手が逃げ遅れて腕を骨折した以外けが人はでなかった。



　この第一報が飛ぶやいなや管領足利直閣下は激しく激怒され、翌７日の会見において「太上皇婿陛下であらさられる御方、それも大幹皇室のご出自でいらっしゃるお方にかかる無礼を致すなど、石動武家の風上にも置けぬし、生かしておくべきではない。よって将軍殿下の名のもとに本日行われた簡易軍事裁判で銃殺刑とした」と憤慨気味に語られた。

　一方この処分について統合参謀総長高野翼閣下は「我が同胞たる親衛軍士卒が銃殺されるというのに、私は一言も聞いてない」と不快感を顕にし、「高貴なお方に無礼を働いたとは言え、酒に酔っての話。ここまで極端かつ拙速なご裁許を下されるとは、悪いが管領殿は物狂いか何かではあるまいか？」と嘲笑気味に語られたとの事である。



　土岐親衛少将の銃殺刑は10日にも執行される予定であるという。

【政治】皇帝陛下、「征夷大将軍永代足利氏の勅」を発布。足利氏による征夷大将軍世襲体制が確立。



　543年9月31日、真備宮皇帝陛下は「征夷大将軍永代足利氏の勅」を発布された。これは今後の征夷大将軍を足利氏の女子に限定する勅令であり、我らが武家の棟梁足利一門はついにその輝かしい功績により皇帝陛下第一の臣下となるに至ったのである。足利氏万歳！将軍殿下万歳！



【政治】尊子将軍殿下、内閣制度の廃止と公方府体制の導入を宣言。



　543年10月1日、尊子将軍殿下は内閣制度の廃止と公方府体制への移行を宣言された。これにより132年間にわたる内閣制度の歴史に幕が下りた。

内閣制度と公方府体制の比較図



　今回の改変で、総統府を除く各省庁は公方府配下へと継承されるものの、大きな違いとしては「軍事最高指揮官」と認識されていた征夷大将軍が総統の職務権限を吸収することにより事実上「軍事行政の最高指揮官」として制度化された事が大きい。将軍殿下はこれまでの内閣制度に依拠した暫定的な体制から抜け出し、体制的にも事実上、「皇帝陛下第一の臣下となられたのである。将軍殿下万歳！

　また将軍殿下直隷の官職として「管領」、直轄部署として「統合参謀本部」が新設された。管領は各省庁を統括し、統合参謀本部は陸海親衛三軍の最上位作戦指導を行う。これは「管領」が行政の、統合参謀本部の長たる「統合参謀総長」が軍事のそれぞれの長となる図式である。

　しかし懸念すべきはその人選かもしれない。今回管領に就任したのは元副総統、将軍殿下の妹君、足利直閣下。対して統合参謀総長に就任されたのは元武装親衛隊全国指導者高野翼閣下（直参親衛軍総大将を兼任）なのである。保守気質で文治路線の直閣下と、革新派急先鋒で武闘派の中核たる翼閣下との不仲は兼ねてから周知のところであろう。お二人の関係が政局にどのように影響していくのか、政界には波紋が広がっている。