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労働党機関紙<赤光>  カルセドニー二大政党の一翼、労働党の機関紙
7月 04 (木曜日) 2019
【再掲】通信障害期の本紙社説 12:24  カルセドニー社会主義連邦共和国 
【再掲】通信障害期の本紙社説

 大規模通信障害中、場所を移して行われていた本紙報道について、こちらへの掲載を求める声が大きかったことを受けて、こちらへ再掲する。

843年8月中旬、本紙は普蘭合衆国の対ライン共和国宣戦布告を受けて、次の社説を公表した。



【社説】普蘭のライン宣戦の正当性挙証は困難

 大規模な国際通信障害が継続する中、普蘭合衆国は843年8月中旬にライン共和国に対し宣戦布告を行った。同国は我が国が主唱するフリューゲル平和原則条約起草委員会の参加国であり、当然ながらその根本理念の筆頭である「国家は、正当性のない戦争行為を行ってはならない」に対して同意しているので、同国はなにがしかの形でこの宣戦布告に対してその正当性を挙証する責任を負っていることになる。しかし、私の見立てではこの正当化は極めて困難である。

 宣戦布告の理由として普蘭合衆国は、「ミルズ内戦において共和派(=ミルズ政府)を支援し、ミサイル攻撃を行い王党派を支援する普蘭軍事顧問団を殺傷した」とした上で、「水面下で協議を呼び掛けてきたが、拒否する回答を受け」たため宣戦布告を行ったとしている。一方で、我が国が得られる情報から把握する限りにおいて、ライン共和国がミルズに対してミサイル攻撃を行ったのは842年10月中旬の1回限りであり、この攻撃は高精度精密誘導ミサイルが使用されたため損害を受けたのは目標地点に存在した反乱軍のみである。これを総合すると、次の事実が読み取れる。

 まず、普蘭合衆国はミルズ内戦において自らが平和友好条約を締結している相手であるミルズ政府ではなく、同国内で反乱を起こしているとされる王党派を支援していた。これは、明らかに両国の平和友好条約第2条にうたわれている内政に対する相互不干渉の原則に違反している。次に、「王党派」を支援するのみならず普蘭合衆国はミルズ国内の「反乱軍」に対して軍事顧問団を派遣していたことを事実上認めているが、この「反乱軍」はいわゆる政府転覆や革命を目指す政治組織ではなく、農村や防災都市への破壊活動を繰り返す単なる暴徒集団であったことはそれ以前のミルズ国内の情勢分析(過去ログ)から明らかであり、このような暴徒の活動に普蘭政府が関わっていたのであればそれは一切正当化することはできない。最後に、普蘭政府は「水面下で協議を行ってきた」とする一方で国際社会に公表する形ではライン共和国に対し何らの外交的接触も行っていない。観光者通信の公開記録すら存在しないのである。当然ながら戦争は外交交渉の経過を受けての最後の手段として用いられるべきであり、起草委員会の根本理念に同意を表明している以上普蘭はその「外交交渉は尽くされ、止むを得ず最後の手段として戦争に訴えた」ことを証明する義務がある。しかし、このような状態でそれを普蘭政府が示すことは極めて困難だろう。

 我が国はミルズ政府とは外交関係を有しておらず、ミルズ内戦においては中立的な立場である。王党派が政府による弾圧を受けていた可能性についても指摘されており、この内戦においていずれが道義的正当性を有しているか判断することは難しい。しかし、普蘭合衆国はミルズ政府との平和友好条約に法的に拘束される立場であり、そのような前提がありながら「王党派を支援」し、王党派が内戦に敗れるとミルズ政府からの要請を受けて国際法上正当にその武力を行使したライン共和国に矛先を向ける普蘭合衆国の行為は、国際の正義どころか、国際法の、国家関係の、基本原則である「条約の遵守」を完全に無視していると言うよりない。さらに、普蘭政府は宣戦布告文中で「本戦に関する仲裁及び我が国への非難を行う国家は同様に宣戦布告対象となることを心すべし」などとのたまっており、これはもはや国際社会に対する恫喝に他ならず、このような行為を座して見過ごすことは我が国を含む先進諸国の国際の正義を維持するための役割を果たす気がないと批判されても仕方がない。国際社会の正義と道義を知る諸国は、普蘭合衆国との条約関係などにとらわれず(同国が条約関係を尊重する意思がないことはもはや明白である)、直ちにこの暴走行為を停止させるために適切な措置を取るべきであると私は断言する。

文責:前外交委員長 ユハル・ツァボライト

追記:普蘭合衆国は「平和原則条約起草委員会からの脱退を示唆」したと同国の主要紙であるベルクマリ・タイムズ紙が報じた。仮に、同国が平和原則条約の根本理念に則った行動を行うことができないのであれば、脱退の他に手はないだろう。しかし、それはすなわち「正当性なき戦争行為」を行なっていることを自ら認めたに等しい。



これに対するベルクマリ・タイムズ紙の主張(本紙社説投下後6期後に公表されている)を受けて、本紙は843年10月下旬に次の社説を公表した。



【社説】ベルクマリ・タイムズ紙への反論

 ベルクマリ・タイムズ紙は「〈赤光〉紙社説は論評に値せず」の名で本紙報道に対して「仮定と仮説に彩られた妄言」であると述べ、その後に自ら「仮定と仮説に彩られた妄言」を述べている。ところが、後半2パラグラフをかけて述べているベルクマリ紙の「妄言(自称)」を取り除くと、当該社説はほとんど本紙社説に対して反論を行っていないことが明らかになる。本紙は先の社説において「王党派支援は普蘭=ミルズ平和友好条約第2条に違反する」「ラインミサイル攻撃により被害を受けたのは『反乱軍』のみであり、これにより軍事顧問団が殺傷されたのであれば普蘭は反乱軍の破壊行為を支援していたことになる」「国際社会に情報公開を行わず宣戦に踏み切った」の3点を普蘭批判の論拠として挙げている。これらはすべて条約の条文、国際情勢分析(過去ログ)、普蘭の宣戦布告の文言を根拠として取り上げている。しかし、ベルクマリ紙は一切これらの具体的批判に対して反論することが一切できず、「妄言」とレッテルを張ることしかできていない。本社説は「ベルクマリ・タイムズ紙への反論」と題しているが、そもそも当該記事に「根拠のある主張」と言える部分はほとんど存在せず、反論しようにも中身がほとんど存在しない。

 これではあまりにも締まらないのでベルクマリ・タイムズ紙の主張の中で「条約違反を声高に論説しておりながら、最後は普蘭合衆国との条約を無視せよと語るのはお笑い」とする部分については反論を行うことにしよう。まず、普蘭がミルズとの平和友好条約を明らかに無視していることについてベルクマリ紙は「一貫してミルズ皇国との平和友好条約を遵守している」と判で押したように繰り返した以外何ら反論を行っておらず、事実上「条約違反との指摘に適切な反論を行えない」状態となっていることを確認しておく。その上で、本紙は「普蘭合衆国との条約関係などにとらわれず」適切な措置を取るべきだと述べているのみであり、「条約を無視せよ」などと語った覚えはない。もちろん、条約は遵守すべきものだが、普蘭側が自国の都合で条約をいつでも無視するような態度を取りうる以上、同国との条約に基づいた義務の履行を普蘭が他国に求める資格はもはやない。この事実を本紙は確認したのみである。



 また、ベルクマリ・タイムズ紙への反論という本社説の趣旨からは離れるが、普蘭合衆国の主張に対する批判も併せて掲載することとしよう。当初の宣戦布告の文書においては軍事顧問団が「王党派を支援する軍事顧問団」と明記しており、ライン共和国が「共和派を支援」したことと対置している。しかし、王党派の支援が平和友好条約違反であることを指摘されるとライン共和国への観光者通信の文面の中で「講和を支援していた」と主張を翻しており、さらに「王党派共和派それぞれを支持する一派がいる」などとそれまで一切公表されたことのない新たな情報を公開した。しかし(そもそも王党派を支援する資格は普蘭にはないことは前に述べた通りであるが)、ミルズ政府からの公式な要請を受けてミサイル攻撃を行っているライン共和国政府が軍事顧問団の存在を把握しておらず、ミルズ皇国政府も軍事顧問団の派遣要請を行ったことを否定している以上、少なくとも「共和派を支援する軍事顧問団」は存在しなかったことは明らかであり、「王党派を支援する軍事顧問団」もミルズ政府(=共和派)の感知するところではなかったことは証明される。よって、普蘭の言う「軍事顧問団」は少なくともミルズ・ライン両国に対してその派遣の通知を怠っており、その時点でライン共和国のミサイル攻撃で被害を受けたとしてもライン側に一切非はない。

 さらに、普蘭政府は観光者通信の中で「ミルズ内戦は一旦終結したと判断し、両国間に平和友好条約を締結した」とする一方で「軍事顧問団は内戦終結を模索している」と明らかに自己矛盾する発言を行っており、本紙はもはや普蘭の外交発言は支離滅裂であり、自らの暴挙を正当化する手段を見出していない。ベルクマリ紙は我が国、特に我が労働党の唱える平和原則条約の基盤である「戦争の正当性」を「有利に持論を展開するための便利な道具」などとレッテル貼りするが、ラインへの宣戦布告において戦争の正当性の挙証責任は普蘭側にあり、その責任を果たさず、首尾一貫しない言い訳を並べ立てているだけの普蘭が我が国が唱える「戦争の正当性」を批判する資格はない。
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