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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2013/6/6 0:27
ゲスト    投稿数: 0

== Flugel Another Story vol.10 ======

 レゴリス帝国の一地方、スリューフェン。
 その州都の郊外に、ノルティスという製薬会社の研究所が存在する。
 ノルティスは帝国成立と同時に成立し、多くの医療機関に繋がりを張り巡らせている。フリューゲルでも有数の製薬会社。
 その研究所は、国家から援助により近代的な設備が整い、優秀な人材の集まった、帝国の医療技術を支える一大拠点。

 最近では学校の社会科見学にも利用されるなど、一般の人々にもオープンな姿勢が取られている。
 だがこの研究所の真の目的が、薬物投与や心理操作をも視野に入れた洗脳及び自白誘導の技術の研究であることは知られていない。被検体として秘密裏に書類上は刑が執行された死刑囚たちが運び込まれていることも。帝国の闇に潜む魔術組織/Lemegetonの機関の一つであることも。
 
 
 
「主任。昨日のテストの解析結果がでました」
 コンピュータの青い画面のみが照らす薄暗い部屋で。
 プリンターから吐き出されるカルテに目を通し、その白衣の研究者は薄ら笑いを浮かべる。特別な被検体がやってきてからというもの、行き詰まっていた彼の研究は急速に成果を上げつつある。組織でのさらなる地位も約束されるだろう。
「よろしい。被検体の方は……」
 研究者の問いに、モニタの数字に見入る助手が返す。
「"姫/Princess"の方は、睡眠時間は七時間強、朝食も残しておりません。疲労も感じていない様子」
「よろしい」
 研究者は無数の動物実験を繰り返し、その後十を越える人体実験の失敗により死者と廃人を量産しデータを蓄積してきた。
 今回の被検体は死刑囚ではなく、上層部が送り込んだもの。上層部の意図はわからない。そのうちその意図に触れる権限も手に入るだろう。
 
 
 
 プリシラ・アルヴィドソンという十三歳の美少女は死んでしまいました。
 ではどうしてモノローグを語っているというと、プリシラの人格は一度破壊されて、新しい可愛いプリシラとして再構成されたのです。いろんな女の人の記憶や知識が渦巻いて。学者としての知識も、母親としての経験も、殺人鬼の恍惚もプリシラの中に。
 主任さんが知らなかったのは、新しいプリシラは娼婦であり、魔女であり、そして魔のモノであったこと。
 さよなら幼い私。さよならお姉様。さよなら主任さん。そしてこんにちわ、淫魔/Lilithの私。──狂おしい恍惚への衝動を、プリシラは抑えることはできませんでした。
 
 
 
「……だからといって、死刑囚たちを解放してまわることはなかったじゃないの」
 リーゼロッテがはっちゃけた悪戯っ子に苦言を呈する。魅了/Charmの業により研究員たちは次々と死刑囚たちを解放し、そして次々に殺害された。数十人のサイコパスたちはいまだ行方がしれず、血塗れの惨劇の跡が残るのみ。ノルティスの被った損害は計り知れず、その後始末も容易ではない。
「ごめんなさい。プリシラは罪を犯すのと、罪を犯させるのが快感なの。もちろん許してくれますよね」
 恐れを知らぬ小悪魔が微笑む。知識や経験があっても、精神年齢は即座に上がったりはしないらしい。使い途はあるが、扱いには苦労しそうだ。
「歓迎はしないけれど、魔力があることは認めるわ。【暴食/Gluttony】を名乗りなさい。貴方に利用価値があるまで生かしておいてあげる」
 
 
※上記文書はイメージであり実際の外交に影響を及ぼしません。
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投票数:1 平均点:10.00
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2013/6/9 21:35
レゴリス帝国  一人前   投稿数: 84

Flugel Another Story Regolith Side vol.1

「2人の魔女/witch of Two」

レゴリス帝国の帝都ブリンスト。
帝都ブリンスト中央区にあるレスタディアン通りには帝国の官公庁が面しており、この通りが帝国の中枢と言っても過言ではない。
その通りの一番区には総統公邸と呼ばれる大規模な屋敷がある。歴代の総統らはここに居を構えた。
そして通りを挟んだ向かい側には、総統が政務を行う建物として総統官邸がある。

その総統官邸の総統執務室。

壁にはこの総統執務室で度重なる決断を下したであろう歴代の総統らの大きな肖像画が飾られている。
執務室はかなり広く、400平米もの広さを誇っている。所々には来賓らとの会談に臨むソファーや観葉樹等が置かれている。
そして、執務室中央奥に置かれた執務机の席には、その立派な椅子に見合わない小柄な人物が座っていた。
彼女は外見こそ幼い10代前半の少女の外見をしているが、実際は年を取らない"不老不死の魔女"である。
その彼女の名はリーゼロッテ・ヴェルトミュラー。この惑星フリューゲルに於ける3大超大国の1つとして数えられる国家、レゴリス帝国を統べる総統だ。
そして、ヴェルトミュラーには裏の顔もある。レゴリスを影から操る魔術機関レメゲトンに於いて【色欲/Begierde】を司る大魔術師という顔が。

ヴェルトミュラーはここ数日、総統公邸の喫茶室でヴェルトミュラー自ら召喚したアンラ・マンユの化身である夢魔の王ジャスリー・クラルヴェルンとの会話に興じていた事もあり、執務が滞っていた。その為、ヴェルトミュラーは執務机で溜まっていた書類をひたすら処理していたが、それも先程終わり、今は息抜きとして聖マズダー産の紅茶を飲み、ティータイムに興じていた。

その時、ヴェルトミュラーの視界に1人の女性が現れた。
その女性の名前は黒枝鼎。現役将官の中で唯一元帥杖を持つ軍人だ。
彼女はヴェルトミュラーと同じ年齢なのにも関わらず、未だに10代後半の外見をしたままだった。
その原因は、ヴェルトミュラーと同じ。詰まる所不老不死の魔女だからだ。
魔術機関レメゲトンにも所属しており、【憤怒/Zorn】を司る大魔術師でもある。

「・・・忙しい筈の帝国軍統合作戦本部総長がこんな所にいて大丈夫なのかしら?」
「無問題よ。リズ。私が居なくても統合作戦本部は廻り続けるもの」
そう言って鼎は総統執務室の一角にあるソファーに腰掛けた。
「そう・・・。ところで、何をしに来たのかしら?よもや紅茶を飲みに来たとか言わないで」
「まさか。報告しに来ただけよ。エルジアにおける軍事クーデターが終結したわ」
「あら、早いわね。てっきり1.2年は掛かるものだと思っていたのけれど」
事実、ヴェルトミュラーはそう思っていた。軍事クーデターというのは簡単には終結しないものだ。
実際にレゴリスでは何度もそのたぐいのものが起きているが、それらは1年以内に終わった試しがない。
「ええ、エルジアのクーデターに対応して即座に軍を出したけど、それを見てクーデターを起こした連中は顔面蒼白になったらしいわ。で、即座に降伏したそうよ」
「エルジアのクーデター起こした連中、意外と弱かったのね」
「でしょうね。お陰で輸送に掛かったコストが無駄になった・・・。エカテリーナの怒る顔が目に浮かぶわ」
「そうね」
ヴェルトミュラーは心から同意しつつ頷いた。
レゴリス帝国の現財務大臣はエカテリーナ・ガイドゥコフというロシア系の女性だが、彼女は財政に関しては非常に厳しい。
その厳しい姿勢は総統たるヴェルトミュラーすら少し恐れる程である。かつて財政に関して彼女と意見が対立した時の剣幕が未だに忘れられないらしい。

「そういえば・・・。秋津皇国が我々と成蘭王国連邦が派遣した国際調査団に難癖をつけたそうだけど、それは本当なのかしら?」
「そうよ。この惑星フリューゲルは確実に世界大戦に向かっているわ。私の望む通りに・・・」
「確かにそうね。この問題は最早秋津皇国の譲歩無しには解決できないし、その渦中の国は譲歩する気は皆無のようだし。後は武力で解決するしか無いと思うわ」
「ふふ、今から起こるだろう惨劇が楽しみだわ」

「・・・そう言えば、リズが外務省の無能連中が出した報告書を見て、呆れを通り越して涙を零したという話は本当なのかしら」
それに対するヴェルトミュラーの返答は引き攣った笑顔だった。
「そして、後で密かに外相を粛清しようとして、リズの夫の駆に『粛清だけは止めよう』と言われて渋々中止したという話は本当なのかしら」
ヴェルトミュラーの顔は更に引き攣った。何故何時も鼎だけには情報が駄々漏れなのかと思いつつ。

※上記文書は実際の外交等に影響を及ぼしません。

投票数:0 平均点:0.00
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2013/6/11 0:13
ゲスト    投稿数: 0

== Flugel Another Story vol.11 ======

 フリューゲル歴473年12月4日は記念すべき日と忌むべき日が重なることになった。
 記念すべき日というのは──ルーシェベルギアスでの商工博覧会が開催されたということ。ルティーナ・エルツ・ルーシェベルギアス公爵の開催宣言の下、フリューゲルの多くの国家がその国威を掛けて技術と文化を披露しあう、平和の祭典。
 忌むべき日というのは──後に「アウセクリスの大火」あるいは「メイスナーの火祭り」と呼ばれる、ティ・ラフィール首都での放火事件が発生した日ということである。

 完全に不意打ちを食らってしまった。
 この日のために入念な準備が行われていたのであろう。首都アウセクリスの早朝に発生した同時多発的な火災の発生は、あらかじめ用意されていたと思われる大量の燃料によって瞬く間に燃え広がり、昨晩からの西風によって火の手は首都全域に広がりつつある。一体どれほどの人命損失、経済的損失になるか、考えるだけで気が遠くなる。
「誰が言ったんだっけ。『これは講和会議ではない。ただ一時の休戦に過ぎない』と」
 最高評議会議長たるルキウス・キルヒアイゼンは、瓦礫に阻まれ、動かぬ議長専用車から忌々しげに降り立ち、同乗の美少女の手を取って語りかける。傾国者とも呼ばれる美貌の妹、アイリス・キルヒアイゼンは、スマートフォンを弄りながらも優雅に兄に続く。
「ヴィルヘルム・ニーチェ海軍中将殿の言葉ですわ。お兄様。ただし、口に出したのがあのご老人というだけであって、小宰相たるアラン・メイスナー閣下も軍政家グラナ・ヴァルシュタイン将軍閣下も同感でしたでしょうね」
「黒幕はどっちだと思うかい?」
「実行可能性から考えれば、この首都の"復興"に携わっていたメイスナー閣下かと。ただし、何らかの理由でヴァルシュタイン将軍閣下の目がくらんでいることも確かかと」
「やれやれ。僕たちはあの二人と一緒に顔をつきあわせて会議していたわけだ。後ろ手にナイフならぬマッチ箱を握って握手をね」
「それはお互い様ですので。お兄様。今は官邸に辿り着くことを考えましょう。……回線繋がりました。ファウスト閣下が先に着いています」
「クーデター部隊が攻撃してくるなんてことはないだろうね」
「それができるならとっくに私たちの命はありません」
 キルヒアイゼン評議長は鳴り止まないサイレンの音に顔をしかめながら、電話の向こうの相手に現状の確認といくつかの指示を飛ばす。法務部長の事は正直彼は苦手としていたが、少なくとも冷綴者という二つ名は有事であっても揺らぐことはないようだ。
「迎えを待っていられない。歩こうか。僕ならルートに狙撃手を配置する。ちょっと遠回りするよ」
「はい。……なんだか懐かしいですね」
 アイリスが日傘を広げ、火の粉を払う。
「炎の中を二人で歩くのはタールウィルの空襲以来かな。そうだな、あれからもう十年も経つか……」

 
※上記文書はイメージであり実際の外交に影響を及ぼしません。
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投票数:0 平均点:0.00
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2013/6/12 19:14 | 最終変更
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== Flugel Another Story vol.12 ======
 
 
「王子様。どうかルティーナを見て下さい」

 ルーシェベルギアス商工博覧会!

 フリューゲルに覇を唱える名だたる大国たちが、新進気鋭の新興国が、その威信をかけて自らの文化と技術を披露する祭典。

 世界中から人々が集まり、物産が集まり、この歴史的とも言える催しに参加している。ルーシェベルギアスという小国は、ただこの日、この瞬間、世界の中心となった。

 そしてその祭典、この公国の最重要人物、数百万人の観光者の誰もが知る、知らなくともパンフレットの表紙を飾る少女、ルティーナ・エルツ・ルーシェベルギアスはレゴリス帝国のパビリオンの一角で、帝国最新のロリータファッションに着飾っていた。

「ああ、うん。ルティーナ。似合っているよ。可愛い。僕の宝物だ」

 アトリエ・ナイトメアのクラシカルコーディネート。シャーリングブラウスワンピースと、編み上げショートコルセットがルティーナを高級な愛玩人形の様に飾り立てる。

「もっと言葉の限り褒めて下さい。王子様」

 衆人監視のもとで、ルティーナ公爵は愛人たる成蘭の王太子に抱きつき、腕を取り、身体を押しつけ擦り付ける。

「みんな見ていますよ。写真も取られている」

「だからこそです。ふふ、"可愛がって下さい"と言わないだけ、ルティーナも抑えているのですよ。だから……」

「だから?」

「キスしてください。全世界の女の子が羨むような」

 本国に知られたら──間違いなく知られるだろう。もしかしたら新聞の一面トップになるかもしれない。だが、拒絶することも考えにも浮かばない。黒石治宗王太子は観念して腕の中の公爵を抱き寄せ、唇を重ねる。──程なくして巻き起こる歓声とフラッシュの嵐。
 
 
 
 
「あのさぁ、ムネハル。君は大国の第一王太子なんだろ」

 スオミの王族にして、パルヌ伯の当主。燃えるような赤髪の青年。同じような立場であるアルフレートがあきれた口調でそういう。治宗と彼は性格が合っているとはお互いに思ってはいないが、いつの間にか話し相手以上の存在となっていた。

「見ていたのか」

「君が公爵から離れるのを首を長くしてね。おっと、僕はそういう趣味はないから安心して」

 スオミのパビリオンの物陰で、二人はトナカイ肉を囓りつつ一息を吐く。我らが公爵殿下は放火テロで到着が遅れたティ・ラフィール外務部長の応対の為、治宗を解放した。

「でまあ例の話、裏、取れたよ」

「……父上の事か」

「ああ。親父さんは持って五年らしい。つまり君が成蘭王になるには、五年以内にその実力を本国に見せつけなければならない。僕は君の弟は知らないが、君は王になるべきだ」

「僕に王が務まるかな? 昔の僕は何もできず、今の僕は公爵がいなければ何もできない」

「半歩ほど前進してるじゃないか。実力なんてものは目的ができてから付ければ良いのさ」
 
※上記文書はイメージであり実際の外交に影響を及ぼしません。ホントです。信じて下さい。
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投票数:0 平均点:0.00
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2013/7/3 21:38
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== Flugel Another Story vol.13 ======
 
 ルティーナ・エルツ・ルーシェベルギアス公爵が公の場に姿を現さなくなって数ヶ月が経つ。
 ティ・ラフィールの亡命貴族達の首魁、イナンナ・メイスナーとの会見が最後だっただろうか。メイスナー大公家とルーシェベルギアス公爵家は遠縁に当たるという話だが、ルティーナの政治への興味は徐々に失われているようだ。
 成蘭王国の黒石治宗王太子は、宮殿に引き籠もって酒色に耽る公爵を満足させつつ、スオミの貴族と共に各国の有力者と交流している。
 ルティーナは成蘭王国の継承権問題についてはまだ触れてはいない。
 各国で勃興する社会主義勢力など、おそらく知りもしないのではないか。
 
 レメゲトンからの監視者、エーファ・ブルーンスは監視対象者が怠惰の陥穽に嵌まっていくのに最初眉をしかめたが、すぐに理解した。この夢魔にとって、国政も外交も長き闇の生の中のひとつの退屈しのぎに過ぎなかったのだ。
 
「ルティーナ様。エーファは明日15歳になるんですよ」
「あら、おめでとう。明日はお休みで良いわ」
「ありがとうございます。……ルティーナ様はお誕生日とか祝わないのですか?」
「私たちが誕生日を祝っていたらキリがないもの」
「あの、ルティーナ様の魔齢をお聞きしてもよろしいでしょうか」
「私が生まれたのは星歴4022年のヴァレンティアのリオーヌだから。自分で計算して」
「せ、星歴ですか…グレゴリオ暦ではなく?」
「うん……惑星ルヴァースで帝国千年祭をやった覚えがあるから、最低でも一千歳かしら」
「……想像を絶しています」
「永く時を生きていても、私は物知りとかじゃないの。記憶は直近の数十年しかないから。ヴァレンティアのことも、ルヴァースのことももう思い出せないし、私の名前が本当にルティーナだったかもわからない。多分居たと思う無数の恋人たちのことも」
 
 
「……ねえ、あの子はまだ?」
「まだです。政務で忙しいのですって」
「早くあの子が欲しいわ。抱きしめてキスして、虜にして堕落させたいの。快楽に溺れさせて愛を誓わせて、可愛がってあげたいの」
「治宗王太子はよろしいのですか」
「いいのよ。平等に愛してあげるから」

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2013/7/10 22:10
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== Flugel Another Story vol.14 ======

「リエラはお姉様の望むことはなんでも。お姉様の望むことなら…」

 潤んだ瞳と媚びた声。屈服の言葉。リエラ・エアリーヌが、聖石アクアマリンの巫女とも言われた光の子が、夢魔に自我と魂を明け渡し、頭を撫でられ、忘我の表情で愛の喜びに浸っている。数日前、ルティーナ公爵は言った。あの子を汚し犯し、堕落させたいと。そしてそのようになった。公爵はそれを見てよしとされた。

 少女王と呼ばれていた頃は着ることが出来なかったというゴシックロリータに身を包み、リエラ様は可憐さと清純さをそのままに、堕天使や小悪魔としての魔性を身に付けている。

 それにしても、堕落の進行があまりに早い。魔術とは無縁の成蘭の王太子ですら相当な抵抗と葛藤があったのに。もしかしたらこの国にくる前から公爵に何かされていたのかもしれない。

 結局リエラ様はノルニル崩壊の予言以外は神託を公開しなかった。公開しなかったのでなく、神託を受けられなかったのかも。誰も気がつかぬうちにリエラ様は聖性を喪っていたのかもしれない。

 ……あるいはもう既に身体の何処かに所有の刻印を押されているのかもしれない。悪魔の寵愛を末永く受けるための不老の呪い。見えざる鎖。魔術を極めてのそれでは無く、魔の眷属としての永遠。

「リエラ様」
「なぁに? エーファちゃん」
「本人が幸せなら、何も問題はないのでしょうか」
「太古の昔から繰り返し繰り返し問われてきた命題です。どんな思想家も聖人も、万人を納得させられる説明はできませんでした。だから、正解はありません。貴方がよかれと思う方を信じてください」
「……そうですね」
 愚問だった。犠牲者にこんな事を聞くなんて。もう目の前のこの人は、リエラ様であってリエラ様ではないのだ。
「そんなに悲しまないで。あの方は魔のモノにしてはとても優しい人。きっと私が滅びるまで幸せな幻想を見せてくれるでしょう。リエラはルティーナ様の幸せなお人形。エーファちゃんは優しいメイドさん。だから何も問題はないの」

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== Flugel Another Story vol.15 ======
 
 成蘭連邦王国といえば、フリューゲルにおいて知らないものはいない。この国際政治上のグレートパワーの一角を占める先進国である。
 
 成蘭連邦王国の中心は成蘭王国。
 成蘭王国の首都は成蘭市。
 休日の昼ともなれば、大国の首都の必然。成蘭市は多くの市民と観光客でごった返す。
 
「お姉様方! はやくー!」
 ゴシックロリータを着込んだリエラ・エアリーヌが、童女のような声と雰囲気でルティーナたちを呼ぶ。少女王としての威厳はもうそこには無い。
 食のメインストリートたる"食い倒れ成蘭"はどこもかしこも行列。
 遠い異国からやってきたルティーナ・エルツ・ルーシェベルギアス公爵は、この国の王太子たる黒石治宗の手を握り寄り添い、人の海の中で迷子にならぬようにするのが精一杯。
「…こんなに人が多いなんて」
「君が驚くのは珍しいね」
 今日は市井の店で昼食を、とルティーナが無邪気に提案し、彼女の虜たる治宗はこの事態を予見しつつも反対はしなかった。あらゆる障害を排除し、この夢魔の望みを達成することこそ王太子の望み。存在意義。
「何処にしよう? 何を食べたい?」
「何処でも良いの。王子様が連れて行ってくれる所なら」
 ルティーナのいつもの言。確かに献立の選定など、姫君のすることではない。すべて決断は人任せ。ただ彼女は人を虜にし、雛鳥のように親鳥の餌を待ち続ける。
「…どこでもかい? 例えばこの国の王座でも」
「はい、どこでも。ルティーナを可愛がってくれるなら」
「…じゃあ、リエラに決めて貰おうか」
 王太子が少女王に身振りで合図する。リエラは頷くと、くるりと身を翻し、目聡く店前の順番待機用ベンチに座って場所を取る。
「…てっちりか。ふぐ料理とは意外だね」
「うん。お好み焼きやたこ焼きはソーヴィニヨンにもあるし。お姉様には一番高いお店がいいの」
 夢魔の虜囚同士の奇妙な友情。論理的に考えてこんなものが成立することはおかしい。そう頭では判っているのだが、これがエーファ・ブルーンスのいう夢魔の幻惑の業ということなのだろう。
「二十分待ちだそうだけど、大丈夫かい?」
「はい。今日は三人でデート。恋に狂わせてあげます。…楽しみましょう」

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== Flugel Another Story vol.16 ======

ジャスリーさまが失踪した。

リーゼロッテ・ヴェルトミュラー総統が他国との首脳会談のための国外に出立していたある日のこと。
ジャスリーさまは忽然と、何の前触れもなく姿を消してしまったのである。

警備主任者は戦慄した。ジャスリーさまはリーゼロッテ総統から国賓待遇で遇するよう指示されており、総統は任務に失敗するような無能を決して許さないお方だった。事が露見すれば出世の道が閉ざされるどころか、もしジャスリーさまの身に何かあれば──例えば反総統派の手に落ちることがあれば──生命すら危うい。不可解な事故がいつ自分に降りかかるか知れたものではない。

箝口令が敷かれた。総統が帰国するまでの間に見つけるよう、秘密裏の捜索が始められたのである。

ジャスリーさまはお美しく、気だても良く人懐っこくて上品で明るい感じの可愛いは正義な美女であったから、お屋敷で彼女を知らぬものはいない。捜索は効率良く行われた。

ジャスリーさまの自室はきれいに整理されていて、窓枠はしっかりと施錠されている。ここは二階で、外部からの侵入や脱出の形跡は無い。ただ何処から入り込んだのか、白猫が一匹ジャスリーさまの寝台で我が物顔で丸くなって眠っていた。警備主任者はこの猫を重要参考猫として、侵入経路の推定やDNA鑑定を行ったが有益な情報は出なかった。

ジャスリーさまは冬の間は自室で昼寝することが多く、春の間は中庭の芝生の上で昼寝することが多かった。寝る、食べる、遊ぶ以外の動作を行っているところは目撃されていない。彼女は英雄の介添人にして運命の少女。ただそこにいるだけで盟約者に数奇な運命と栄光と勝利、そして最終的な破滅をもたらす。

直近の目撃証言では、ジャスリーさまはメイドとレゴリスの夏の暑さについて語っていた。メイドはレゴリス各地での熱中症多発のニュースに触れ、うっかり外で寝ないでください云々と語ったという。

プロファイリングが行われ、「ジャスリーさまは何処か近くで寝ている」という結果が出た。近隣の屋敷やホテルなどにも捜索範囲が広げられたが、芳しい結果も情報も得られなかった。白猫は騒がしいなというような顔をしていたが、メイドが買ってきたネコ缶を平らげると、エアコンのリコモンを操作するという離れ業を演じてのけ、何事も無かったかのように丸くなって眠りについた。

リーゼロッテ総統の帰国の前日。警備主任者は妻と泣きながら最後の晩餐を行い、弁護士に財産の相続手続きについて任せ、恩人知人にそれぞれ遺書を書いた。

「この猫、本当にネコ缶食べたのかしら」
報告を受けた総統はジャスリーさまの失踪よりも白猫の日々の過ごし方について興味を抱いた。
総統は寛大にもジャスリーさまの失踪については不問としたが、むしろ責任者として報告を怠ったことを問題視して、彼を警備主任から猫の餌係りへの配置転換を指示された。

同日、ジャスリーさまが数日ぶりに姿をあらわし、リーゼロッテ総統とお茶を楽しまれた。代わりに白猫が失踪した。

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2013/7/25 0:35 | 最終変更
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『Recurring Nightmare とうじょうじんぶつ設定』

【ルティーナ・エルツ・ルーシェベルギアス】
・種族:夢魔/Nightmare
・パワーランク:B+(上級夢魔。夢術/Dreammancy)
 フリューゲルに降り立った悪魔。アンラ=マンユの側の霊的存在であり、幸福感を操るなど強力な精神干渉能力を持つ。ルーシェベルギアス公爵家の子女に憑依し肉体を奪い、一族を殺し合わせて頭領の座におさまる。成蘭王妃の座を別に狙っているわけでは無いが、棚からぼた餅が降ってくるなら美味しく頂くつもり。ただし統治には無関心。
 
 
【黒石治宗】
・種族:人間/Human
・ルティーナ侵食度:75%
・パワーランク:-(完全な人間)
 王子様。公爵は魔力を使った即席の隷属化ではなく、恋愛も絡めたじっくりねとねとした精神侵食を行っている。治宗自身は自分の思考や精神を操作されていることを自覚しているが、どうすることもできないというか、それが彼女の愛情表現であるなら別に良いかというような感じ。
 
 
【リエラ・エアリーヌ】
・種族:魔奴隷/Slave Doll
・ルティーナ侵食度:100%
・パワーランク:D(魔のモノの眷属。翼による飛行)
 ルティーナの眷属。少女王としての光の力は失われ、闇の力で動かされている。黒い翼をはやす能力を持ち、堕天使を思わせる雰囲気を持つが天使とはなんのゆかりもない。不老の存在だが、主が滅びると自分も滅びる。ルティーナさまが欲望のままにぶっ壊してしまった感があるが、本人が幸せなので無問題。
 
 
【エーファ・ブルーンス】
・種族:人間/Human ウィザード/Wizard
・ルティーナ侵食度:5%
・パワーランク:E(見習い術師)
 正統派ウィザードの見習い。15歳。何の能力もないのだが、語り部役として美味しい立場にいる。宮殿ではメイド服着用。ルティーナによって人間が幸せそうに壊されていくところを指をくわえてみていることしかできない。
 
 
【リーゼロッテ・ヴェルトミュラー】
・種族:人間/Human ウィザード/Wizard
・パワーランク:A+(人間の限界突破)
 正統派ウィザードのアークマスター。ルティーナを危険視しているがどうにかして利用できないかとも考えている。
 
『幻燈結界(ファンタズマゴリア) 』
 対象者から辛い記憶を引き出し、それを元にした幻覚を見せ、精神を犯すというもの。
 因みに時間や空間、平行世界に干渉する事も出来る世界改変魔法の一つ。
 平行世界の可能性を重ね合わせて新たなる世界を作り出すことが可能。
 そこでは全てが自身の任意で作り出せ、通常起こらないことを起こせたり出来る。
然し、それを行うにはリーゼロッテの体内に埋め込まれている虚無の魔石の魔力だけでは足らず、5つの聖石・魔石を必要とする。
 
 
【ジャスリー・クラルヴェルン】
・種族:夢魔/Nightmare
・パワーランク:S(アンラ=マンユの化身。夢魔姫。ぬこ変身)
 フリューゲルを破滅させるためにリーゼロッテに召喚された暗黒神の欠片の一つ。ルティーナの主だが放任主義で別に連絡は取っていない様子。リーゼロッテを盟約者/Partnerとして彼女に数奇な運命をもたらす。
 
『空想具現化(マーブル・ファンタズム/marble phantasm)』
 空想を具現化する能力の事。マーブルとは、おはじき等によるダンゴ現象に由来する名称であるようだ。夢と運命を操作するジャスリーさまが持つ能力で、自己の想像力を世界と直結させて、世界を思い通りに変貌させる事ができる。具体的には、世界に接続する事で数多の事象が発生する確率に干渉し、偶然中の偶然ともいえる現象を意図的に発生させるというもの。
 
 
【パルヌ伯アルフレート】
・種族:人間/Human
・パワーランク:-(完全な人間)
 スオミの王族で治宗のトモダチ。野心家。
 
 
【プリシラ・アルヴィドソン】
・種族:リリス/Lilith
・パワーランク:C+(人造魔道士)
 レゴリスのおにゃのこ。過去の魔術師、魔物、娼婦、殺人鬼などの記憶を刷り込んだ強化人間的な存在。同時に人間であることも失われ魔物として堕落し、フリューゲルでは珍しいリリス/Lilithとなる。

投票数:0 平均点:0.00
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2013/7/26 23:12 | 最終変更
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【ルーシェベルギアス閣僚会議】

……皆様。ただいま。

お帰りなさいませ殿下。成蘭ではおたのしみでしたね。

ルーシェはルティーナのいないあいだ、どうでしたか?

天地晴朗。 世は常にこともなし。

それはけっこうです。

それでは殿下、ルーシェベルギアスの現状について報告申し上げます。

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HoI2的スライダーです。トレンドなので我が国にも導入しました。

資本主義陣営、穏健派、良識派をアピールしております。

成蘭、レゴリス、アクアマリン、聖マズダーとの関係に配慮した配置となっております。

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次にルーシェベルギアスの国力ですが、聖マズダーとの莫大な貿易利益により観光都市への換装が完了しました。今や設定通り自国民より観光者数が多い国家となっております。

産業が観光しかありませんので、原材料や燃料を確保する必要もございません。目下、食糧と建材の残量に気を付ければこれほど統治しやすい国家も数少ないでしょう。

なお、首都にミサイル攻撃を受けると「一撃で国家滅亡」あるいは「リミッター発動による強制敗戦」となる素敵仕様となっております。

この点にはくれぐれもご注意下さい。

 

外交関係について報告申し上げます。

まずは先の四カ国の弊国評価についてご覧下さい。

成蘭連邦王国
親密(→) 無所属 第一王太子殿下が長期留学中。同国公爵家と成蘭王室は関係が深く、国王も同国を訪問したことがある。富裕層も多く移住しており、老後の住処として同公国を選択する高齢者も多い。

聖マズダー教国
普通 銀輸入・商品輸出相手国

アクアマリン王国
親密 あり 富豪国家。リエラ元少女王の永住先。

レゴリス帝国
普通 無所属 小国ながら、成蘭連邦王国スオミ王国を始めとした各国の要人らが留学する大変裕福な国家。帝国からもミハイル・コルサコフを始めとした投資家等が移民している。

これらの国とはおおむね良好な関係を構築できております。聖マズダー教国レゴリス帝国との関係は「普通」となっておりますが、関係深化の切欠が無いだけで何らかの利害案件があれば友好度の上昇が見込めるでしょう。

ティ・ラフィール連合国は?

あれはしょうが無いですよなあ。

不可抗力ですなあ。

やー、内戦してるのはティ・ラフィール人で、ハイジャックを敢行したのは同じくティ・ラフィール人ですし。なりゆきでああなってしまったのは不幸ですが、我々はフツーの対応をしたつもりですけどな。

よくわかりました。

報告は以上でございます。

これからどうなさるのです?

おまかせします。ルティーナは親睦パーティの主催でいそがしいの。

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