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Recurring Nightmare

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿.1 .2 .3 .4 .5 .6 .7 .8 .9 | 投稿日時 2013/6/3 1:05 | 最終変更
ゲスト    投稿数: 0

・裏設定にもとづく妄想ssを垂れ流すスレッドです。
・このスレッドにあることは裏設定であり、本ゲームの外交、報道一切影響を及ぼさないとします。このスレッドを理由とした外交や報道は行わないで下さい。

投票数:0 平均点:0.00
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2013/6/3 1:06
ゲスト    投稿数: 0

== Flugel Another Story vol.1 ======

 今夜もエレンドラ宮殿の夜は遅い。

 この宮殿は迎賓館を兼ねている。外国から訪れた賓客をもてなすため、ベッドルームや娯楽施設、ダンスホールが整っている。

 今夜のパーティは数十名の小規模なものだ。ルーシェベルギアス公爵と、各国の駐在大使とその家族の親睦を深めるという、挨拶の要素を多分に含んだもの。

 各国の料理が並び、高価なワインが封切られ、参加者たちはカベルネ・ソーヴィニヨンでの新生活や気観光名所、自国の人事の話をこそこそと。

「皆様、楽しんでおられますでしょうか」

 やがて甘く幼い印象を与える声と装いの少女君主、ルティーナ・エルツ・ルーシェベルギアスが現れる。歩く度に清楚な白いドレスの裾がひらりと舞う。妖精の女王のごとく可憐で、しかしどこか酷く妖艶な雰囲気を漂わせている。

「成蘭国王陛下はどういったお方でしょうか」

 ダンスの相手を務める成蘭の大使へ、ルティーナが問う。

「気になりますか」

「怖い人でなければよいのですが」

「そうですね。私どもの間では恐怖帝と呼ばれております。即位一週間で生きている閣僚がいなくなりました。目を逸らしたら粛正だとか」

「まあ…怖い」

「冗談です。遠路はるばるやってきて、ご婦人を泣かせることだけはありえません」

「大使様は紳士でいらっしゃいますね。ですが国家というものは得体の知れないものです。国益の為に言わねばならぬ言葉や、取らねばならぬ態度もあるでしょう」

「それだけ解っておられるなら怖いものは何もございません。むしろ我が君に粗相がないか心配するくらいです」

※上記文書はイメージであり実際の外交に影響を及ぼしません。

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投票数:0 平均点:0.00
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2013/6/3 1:07
ゲスト    投稿数: 0

== Flugel Another Story vol.2 ======

 フリューゲル最高の魔術機関レメゲトン。

 レメゲトン最高の魔術師。

 不老不死を極めた、レゴリスを統べる黒き魔女。

 誤って強大な力を得てしまった哀れな人間。

 世界の因果の特異点のひとつ。

 その名はリーゼロッテ・ヴェルトミュラー。

 薄暗い部屋。そこにあるのはかつての母星から伝わるゾロアスターの文献。魔術書。魔導書。秘本。聖火。アーティファクト。

 無数の蝋燭が部屋を照らす。香炉からは濃厚な香が立ちこめ、それはこの儀式の主たるリーゼロッテの鼻腔をくすぐる。一体何人分になるかもわからない大量の血による魔方陣の中で、彼女は祝詞を詠い続ける。

 彼女の望むものは更なる魔力。知識、そして若さ。既に彼女は人の限界に達している。ノイエクルスの世界律の中で許される限界まで。

 彼女の力の根源は闇。

 圧倒的な闇。究極にして絶対の悪。止むこと無き堕落。不条理なる運命。あるいは邪神。すべてを汚し、犯し、壊すために存在する忌まわしき力。

 儀式もたけなわ。リーゼロッテの魔力も限界にさしかかった頃、香炉からの煙が魔方陣の中で人に似た姿を取り始める。

「私を召喚したのは貴方? フリューゲルのウィザード」

 煙が全て消えたとき、そこには女が存在していた。純白のドレスを纏った、触れれば消えてしまいそうな、優雅で儚い雰囲気を持った女性。

「我が身に似せて、神は人を作ったというけれど」

「期待外れですか? 貴方が望むなら化け物にもなれますが」

「いいえ。あれっぽっちの生贄で召喚に応じてくれて感謝するわ」

「貴方の抱く絶望が夢魔の門を開いたの。必ずしも血は必要ありません」

「謙遜しなくていいわ、アンラ・マンユの化身。夢魔の王ジャスリー・クラルヴェルン。それで、喚び出したからには世界を破壊してくれるのかしら」

「そんな横着をするにはあと千年は早いです。ウィザード。私は貴方の間違いだらけの召喚に応じたのでは無く、齢にして百年にも満たない幼子の泣き声に、ほんの僅か気が向いたから来たの」

「アンラ・マンユにしては随分と慈悲深いのね。マズダーの宣教師どもの言など当てにならない。でも貴方の存在意義はアンチ・アフラ・マズダーではなくて?」

「私は人間に危害を加えませんよ。人間を殺すのは人間のお役目。私は貴方に望む知識を授けましょう。代わりにフリューゲルに災いを撒き、憎悪と絶望を私に捧げて下さい。世界大戦をみせてください。そして貴方が破滅するとき、その魂は私の虜になる。それでよろしい?」

※上記文書はイメージであり実際の外交に影響を及ぼしません。

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投票数:0 平均点:0.00
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2013/6/3 1:07
ゲスト    投稿数: 0

== Flugel Another Story vol.3 ======

 エーファ・ブルーンスが魔術結社/Lemegetonのメンバーになってそろそろ一年が経つ。

 わずか十四歳の少女の、この一年は常に恐怖と忍耐と不安で目白押しであった。動物や人間の血や組織の採取など、生理的嫌悪感を伴う仕事は数ヶ月で慣れた。それまで何度吐いたり食欲不振になったり夢に見たりはしたが。

 結社を抜け出さなかったのは単に「来る者は拒まないが、去る者は絶対に許さない」という組織の掟があったからに過ぎない。

 そんなエーファの現在の役職は"レメトゲンの幹部にして、レゴリス総統リーゼロッテの侍従"という。

 一見して栄誉ある役職であるが、名前通り小間使いだ。しかも一ヶ月続くのがまれといわれるほど危険な仕事であり、前任者の数は知れず、総統の不興を買えば人体実験係(被験者の方だ)や生贄係に飛ばされることすらあるという。

 そんな役職を2ヶ月もおっかなびっくり続ける事ができたのはエーファの才能か、それとも幸運か。

「お呼びでしょうか、我が主」

 黒いレメトゲンの魔術師の法衣を着て、エーファが頭を垂れる。

 頭を下げる角度は忠誠を示す上で重要だ。そして声を掛けられるまで面を上げてはならない。

「……」

 リーゼロッテは椅子に座り、無言で茶を啜る。

「……」

 気まずい沈黙。非常に不本意な事だが、エーファは主が不機嫌になっていることを感じざるを得なかった。

「エーファ」

「は、はいっ!」

「貴方はルーシェベルギアスに向かい、夢魔の監視役になりなさい」

 主の口元から爆弾が飛び出した。ルーシェベルギアスの夢魔といえば、あのルティーナ公爵しかいない。暗黒神アンラ・マンユの下僕の一つ。つまり悪魔だ。

「お、恐れながら我が力量では手に余る役目かと。それにルーシェベルギアスも遠くございます」

「エーファ」

 震える少女の声にリーゼロッテが優しい声で応える。

「私と夢魔、どちらが真に恐怖するべき存在かわからないかしら? そして私の命令はたかが距離のために軽んじられる程度のものかしら? 答えなさい」

「す、すぐに出立致します!」

※上記文書はイメージであり実際の外交に影響を及ぼしません。

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投票数:0 平均点:0.00
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2013/6/3 1:07
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== Flugel Another Story vol.4 ======

 自分がルーシェベルギアスに留学したのは、必ずしも自分の本意ではなかった。宮廷を離れて静かに暮らしたいと父王に告げると、次の日にはこの国への移住を勧められたのだ。

 留学という体裁を採ってはいるが、期間は無期限であり、宮廷語で翻訳すると「戻って来なくとも良い」らしい。ルーシェベルギアスを成蘭連邦に組み込む布石か、或いは自分と違って覇気も才能もある弟への王位継承への布石か。父王の思惑は解らない。

「ルティーナ殿下」

「はい」

 自分を見下ろしながら、美少女が微笑む。

 目的の宮殿に辿り着いて挨拶も早々に、自分は飛行機酔いと時差酔いにより倒れ伏したのを覚えている。目が覚めたのは公爵の膝の上。

 言うべき様々な外交的、あるいは儀礼的言葉が浮かび、彼女の微笑みの前で消えて行く。

「ご気分は如何ですか?」

「……まだくらくらしています。お恥ずかしい……」

「お気になさらないで。出会いは記憶に残った方が」

 人と話すのは得意ではない。ましてや年頃の異性など。そんな自分に比べて、この白い肌の、箸より重いものを持ったことのなさそうな虚弱な少女が国家一つを支え、各国首脳との会談に応じているのかと思うと内心忸怩たるものが無いわけでも無かったが、三半規管が未だに悲鳴を上げているのは仕方が無い。

「王子様。これから毎日ルティーナを可愛がって下さいね」

 公爵が手を握り、耳元に甘い声で囁く。その声と表情の妖艶さに息を飲む。

「……殿下?」

「ルティーナは悪魔ですから。王子様を誘惑して虜にします。鬱病だった頃のことなんて思い出せないようにしてあげましょう」

「……私を気に入っていただけたと解釈してよろしいでしょうか」

「はい。これから毎日、王子様の思い描く理想の女の子を演じてあげます。そして貴方は恋という罠に囚われて、心の底から私を愛するようになるの」

 変わった子だと思った。そして恐らく彼女の言う通りになるのだろう。自分はもう囚われて、逃げられない。逃げ続けた人生の終着駅がここだ。

※上記文書はイメージであり実際の外交に影響を及ぼしません。

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投票数:0 平均点:0.00
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2013/6/3 1:08
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== Flugel Another Story vol.5 ======

「……それで、はるばるレゴリスから来たの?」

 ルティーナは呆れと哀れみの入り交じった声でレゴリスの魔術結社からのエージェントを迎えた。本物の悪魔を目の前にしてそのエージェント、エーファが震え上がる。

「はい、その。レメトゲン/Lemegetonはヴァレフォール/Valforの高貴なる夢魔たるルティーナ様のフリューゲル/Fluegelへの来訪を歓迎するとともに、好意的不干渉協定/Magic Allianceを提案し、その為…輝月/Ahura Mazdāと暗月/Angra Mainyuが重なるまでこのエーファはルティーナ様との契約大使/Human sacrificeとして云々」

 飛行機の中で一生懸命暗記したたどたどしい口上を述べる。とはいえ、その内容は今ルティーナ公爵が手にしているリーゼロッテの親書と同じであり、意味が無い。

「貴方は生贄?」

「やっぱりそうなんですか?」

「好きにして良いと書いてあるわ」

「はあ…」

 何にも良いことの無い人生だった。両親は蒸発し、施設では虐められ、就職先は完全にブラックだった。ああ、エーファ・ブルーンス13年の人生が一行で説明ついてしまった。

「そんなにがっかりしないで下さいな。ルティーナは優しいですから、痛いことは致しません。ご希望通り私の侍従として置いてあげます」

「…本当ですか」

「気持ちいいことはするかもしれません。貴方は魔女になるのだから、閨の業も覚えて損はしないでしょう?」

「で、できれば魔女よりも魔術師の方が…」

「……さて。そろそろ時間です。スオミ副王様との会談に戻らないと。エーファも来ませんか? アーネンエルベのお話が聞けるそうですよ」

※上記文書はイメージであり実際の外交に影響を及ぼしません。

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2013/6/3 1:08
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== Flugel Another Story vol.6 ======

 レゴリス帝国、帝都ブリンスト。

 中央区、レスタディアン通り一番区。

 リーゼロッテ総統のお屋敷。その喫茶室。

 貴賓の為の部屋であり、世界の災禍の中心。

 純白のレース編みのテーブルクロスが掛けられた丸テーブルの左右に、屋敷の主たるリーゼロッテ・ヴェルトミュラーと、ゲストたるジャスリー・クラルヴェルンが鎮座する。

 リーゼロッテの侍従たる少女が、ジャスリーに見つめられながら聖マズダーの高価なティーセットに震える手で紅茶を注ぐ。

「そういえば、前の子はどうしたの?」

 紅茶を一啜りして、ジャスリーが疑問を口にする。

「ルーシェベルギアスに飛ばしたわ。貴方の眷属の監視をさせてる」

「ふうん」

 アンラ=マンユの化身は少し考え事をするように頭を傾げて、また紅茶を啜る。紅茶の味に満足したのか、ジャスリーは目を細めてカップの液体を眺める。

「フリューゲルの紅茶の産地ってどこかしら」

「さあ…。マズダーや中夏ってところじゃないかしら?」

「ふうん」

 また考え事。

「フリューの皇帝はどう。6歳ですって」

「取るに足らない小物よ。好き勝手できるのは自分の箱庭の中でだけ。ここまで上がってこれるとは思えないわ」

「ふふ。近親憎悪? 私にとっては悪くないかしら。野心と才気を兼ね備えている男は、周囲の人間を巻き込んで振り回して運命を狂わせるの。たくさんの人間に恐れられ、憎悪される殿方の心に住み着いて、私にだけ弱くて脆い姿を差し出させるのがいいの」

「変わった趣味ね。男は有能で野心があるのは大前提条件としても、最低限の紳士さもなければ駄目だわ。そうね。内面は豹のように、思慮深く落ち着いて──無駄口は叩かない。でも責任感は強くて何も恐れないし挫けないの。あとは寛容さも欲しいわね。私には持ち合わせていないものだけど」

「意外と一途なのね」

「何の話?」

「ウィザードのマイハニーのはなし」

「そんな話してたかしら」

「ええ」

※上記文書はイメージであり実際の外交に影響を及ぼしません。

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== Flugel Another Story vol.7 ======

 聖なる祈りを捧げる少女。

 リエラ・エアリーヌは神の使者である。

 運命の青きベリル/Aquamarineの守護者である。

 聖女であり、預言者である。

 王権神授説を実践する祭政一致のこの国家の、その頂点に立つ王であり、最高祭司である。

 特殊な宗教上の理由により、わずか十五歳で即位した少女王。

 今夜もまた、少女は自らの民と、隣国の民の平和と安寧の為に祈り続ける。

 その無垢にして高貴なる魂はさぞや美味であろう。

 その聖性は有象無象の悪霊どもは近づくことすらできないが。

 首に掛けた聖石の加護はあらゆる魔から、あるいは呪からエアリーヌの乙女を護るのだが。

 レメトゲンもアーネンエルベもこの少女王を呪うことは叶わないのだが。

 しかし、ここに一人、アクアマリンの聖なる結界に侵入する魔のモノがいた。

「…ルティーナさま?」

「はい。リエラ様もご機嫌うるわしゅう」

 優雅に一礼する異国の姫君。少女王よりわずかに年上を思わせる外見で、しかしどうしようもない妖艶さと魔性を醸し出す。たくさんの魂を貪った淫魔がそこにいる。

「どうやってこちらにきたのですか」

「幽体離脱/Astral projectionを少々。結界のことならご心配なく。ルティーナは即位式の際にリエラ様から"招かれ"ました。強力な結界ほど融通というのは効かなくて──一度魔のモノに敷居を跨ぐことを許したら、その後は自由に出入りできてしまうのです」

「……凄い」

 差し伸べられた手を握って、少女王は感嘆する。目の前の夢魔は幽体離脱だけでなく、実体化/Materializまでできるのだ。

「はい。便利です。間に合わないはずの即位式に参列したり」

 ルティーナがエアリーヌの髪を撫でる。先代の少女王がリエラにそうしたように。

「こうやって寂しい淋しいリエラ様を慰めることもできます」

「ルティーナさま…」

「踊りましょう」

 

 

「あのね。……あの神託/Oracleは。本当なの」

「……ええ」

「この国かスオミか、ノルニールか……それはわからないけど、酷いことが起こるのは本当なの」

「ええ」

「いやだよう……」

「そうでしょうね」

「怖いの。リエラは災厄しか予言しないエアリーヌになるかもしれない。アクアマリンはねじれた未来しか見せてくれない……」

「リエラ様……」

 泣きじゃくり嗚咽するエアリーヌを、ルティーナは優しく抱きしめる。夢魔はその胸の中で、長い時間をかけてゆっくりと、獲物を消化してゆく。犠牲者は最後で気がつかない。

 

※上記文書はイメージであり実際の外交に影響を及ぼしません。

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== Flugel Another Story vol.8 ======

 陥落は近い。

 自分は──成蘭の王太子、黒石治宗は屈服の一歩手前にいる。

 "ホームステイ"した宮殿の主、ルティーナ・エルツ・ルーシェベルギアス公爵は、自分が寂しい時に側におり、一人になりたい時には視界から消える。その教養は自分の社会学や絵画の話についてこれる程で、しかし知識をひけらかすことなく、頭の回転は自分よりわずかに低く。他人の前では自分の顔を立て、二人きりであればあらゆる求めに応じてくれる。まことに都合のいい存在だった。

 

 そして何よりも誰よりも、彼女は儚く美しく優しい。ルティーナの側にいることは、幸せで暖かく優しい時間であるという事。

 一日の間で、彼女の事を考える時間が徐々に増えてゆく。

 今や自分の中で、ルティーナ公爵はもっとも重要な人物の一人として君臨している。

 

 愛の言葉を捧げれば、おそらくは相思相愛の恋人になることができるだろう。それは恋愛の成就という、人間が一生をかけても得がたいもののひとつ。それが手の届く場所に置かれている。しかしその対価として自分はルティーナに魅惑され、その思考は麻薬中毒のように彼女のことで埋め尽くされるのだ。

 自分がまだ彼女の愛の虜にされていないのは、幼き頃からある対人恐怖症と女性恐怖症の影響であるに過ぎない。女性は値踏みをする。嘘をつく。陰口を言う。試す。化ける──。

 そんな後ろ向きな恐怖心と嫌悪感が最後の砦として機能している。

 成蘭に帰ると言えば、あるいはもう会いたくないといえば、ルティーナは寂しそうな顔をするだろうが逃がしてくれるだろう。

 だがそれで彼女から逃げられるのだろうか。彼女に会えない一日を過ぎるごとに、禁断症状のごとく精神が苛まされるのではないか。そんな状態で彼女に会ってしまったら、自分は完全に彼女の虜になる。

 

 

「ルティーナ様は夢魔なんです。夢と幻と運命を操る魔のモノの一種。犠牲者の絶望と苦悩と後悔を啜って生きているんです」

 公爵付きの侍従エーファ・ブルーンスが、部屋に引きこもった自分に食事を運びながらそう言う。

「夢魔は人間の心の弱ったところにやってきて、"慰め/comfort"という業を使って心の中に依存の種を植えるんです。それは犠牲者の精神の中で発芽して、美しい薔薇に成長します。薔薇は精神を蝕み不安をもたらしますが、夢魔の事を考えたり、夢魔に会ったりすると幸福感を与えます」

「つまり、僕は公爵の餌という訳なのか」

「それが、人間と夢魔の関係なんです」

「……難儀な方だね」

 

 

 

 暗き闇の中で。帳の中で。閨の中で。

「ルティーナ公爵」

「はい。私の王子様」

「ルティーナ公爵」

「はい。私の王子様」

「ルティーナ」

「はい。私の王子様……」

 

 

※上記文書はイメージであり実際の外交に影響を及ぼしません。

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== Flugel Another Story vol.9 ======
 
【夢魔ルティーナの監視報告書】
 
 偉大なる暗黒神/Angra Mainyuの意志の体現者にして、魔術結社/Lemegetonの色欲/Begierdeを司る大いなる総統へ。

 先頃の中夏民国における大いなる裁きは素晴らしいものでした。

 エーファ・ブルーンスという矮小なる闇の落とし子は、あなた様の大いなる御力にただ関心し、暗黒神の加護と最終的な悪の勝利を感じてうち震えました。

 本日、最新の監視報告書が出来上がりましたので、絶対の服従と忠誠とともにあなた様に捧げます。

 

 ルティーナ公爵は国政への関与の度合いを弱めています。三国との君主会談以降は統治には無関心で、戯れに閣僚に質問することはあっても基本的に彼らの好きにやらせています。公爵の意識はオペラ、カジノ、そして毎夜のパーティにあります。

 眷属や崇拝者を増やす様子はありません。公爵が魔のモノであることを明かしているのはエーファと彼女のハーレムの男女のみです。

 ハーレムは現在7人。お気に入りは成蘭の治宗王子で、一日中二人きりで部屋に籠もることもあります。

 幽体離脱を行った形跡が複数回存在し、方向はアクアマリンとみられます。目的は不明ですがアクアマリンとの会談時に少女王あるいは元少女王と絆/Linkを形成した可能性があります。

 魔法戦闘力及び潜在魔力は推し量る材料が無く未だ不明です。

 現在の所、ルティーナ公爵は結社にとって無害です。しかしながら、夢魔の最大の能力は自らを無害に見せかけることです。引き続きの監視が必要と思われます。

 

 

 

 

 治宗様がルティーナ様の手に堕ちた。

 外面的には、何も変わらない。王子は王子。大人しく知性的で、私にも声を掛けてくれる。

 彼は今、幸福だ。今も公爵と二人で、寄り添うように座って語らっている。覚醒したまま見る幸せな夢。ルティーナ様には愛人があと六人もいるのに、疑問にも思わない。

 だがルティーナ様がいなくなれば幸福は不安と絶望に反転し、生きたまま地獄に突き落とされる。麻薬が人間の精神を破壊するように、人間の尊厳など欠片も無くしてルティーナ様の慰めを求めるようになる。得られなければ自殺するのだ。そして夢魔はそんな犠牲者から絶望を美味しくいただく。

 彼らは結婚するのだろうか。治宗様は成蘭の王になるのだろうか。

 そもそも夢魔は不妊のはず。不老の夢魔の年齢や外見はどうごまかすのだろう。

「まー、いーかー」

 考えても仕方の無いこと。私は報告書を封筒に入れて、ちょっと外出。お近くのポストに投函。今日のお仕事はこれでおしまい。

※上記文書はイメージであり実際の外交に影響を及ぼしません。

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