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形式主義的よもやま話

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前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2017/7/8 2:02 | 最終変更
ガトーヴィチ民主帝国  常連   投稿数: 53

1. О голувом цвете 水色について

 721年5月15日午前10時。ニコライ=ジョルトゥイエヴィチ=ガルボーイは、官邸:ヴォロス宮の総理大臣室にいる。チェーニスク県産の木材を使った、高級感のあるつやつやの机を前にして、最高品質の黒革の椅子に深く腰掛けている。一時間前に、電話を受け取った。電話口の外政大臣は、ノイエクルス連邦が停戦条件を受諾した、ほとんど満額回答だ、と、普段通りの早口で、しかしいつになく興奮気味にまくしたてた。

 「Прекрасно.(素晴らしい。)」彼は一言答えた。為政院総理大臣たるもの、敗軍の将だろうと勝軍の将だろうと、多くは語らない。しかし、国民への説明となれば話は別だ。私の発言の一言一句が、国民の気分の高揚と沈滞、国益の増進と減退に直結する。加えて国民には、我が国がどのような停戦条件を提示したのかを知る権利がある。ガルボーイ首相は秘書を呼び寄せ、首相自身による記者会見の準備を整えるように指示した。会見は午前11時から、ヴォロス宮の記者会見場で行われる。

 「ついに、停戦、か…。」終戦とは異なった、宙ぶらりんな言葉、停戦。手放しに喜ぶことを許さない理性に苛立ちを覚えながら、ガルボーイはヴォルネスク解放戦争での自身の動きを振り返る−振り返ろうとして、自身の半生を振り返ってしまう。
 ガルボーイは658年、イヴァングラート市で生まれた。帝国は641年に鎖国されたから、彼は完全なる鎖国下を生きてきた。小中学校の国語と道徳の教材は、スラヴ民族に関する話題であったし、高校の第二外国語では旧ロシア語を専攻した。イヴァングラート帝国大学の法学部に入ってからも、法律の勉強に勤しむ一方で、古代スラヴ語の習得にも力を注いだ。その後は帝国民4300万人を代表する帝国議院議員200人の1人に選ばれ3期30年を努め、710年の選挙で総帥として帝国発展党を完全勝利へ導き、満を持して第33代為政院総理大臣を拝命したのだ。

 幼少期から大スラーヴ主義の手ほどきを受けたガルボーイは、今、帝国の若者たちの教育方針への大スラーヴ主義の盛り込みを継続させる立場にある。半世紀経てもなお、同じ信条が堅く教育方針に採用されるのは、普通なのだろうか…彼にはわからない。彼は大スラーヴ主義が席巻していないガトーヴィチを知らないからだ。「スラヴ民族としての自負心を醸成し、連帯意識を向上させ、スラヴ民族の協同精神を強化する」−−陳腐となった3世紀前の帝国の標語「帝国の発展に邁進せよ」に代わる、帝国の至上命題。我が国はスラヴ民族の盟主とならねばならない…

 ノック。「何かね?」「失礼します。総帥閣下、そろそろ会見場へ…」
「Понятно.(わかった。)」彼はやおら立ち上がって、服装を整えると、扉へと歩を進める。

 彼が、発表原稿に目を通し忘れていたことに気がつくまで、そう時間はかからなかった。


レゴリス先生に触発されて書きました。
ガルボーイ首相は64歳のおっさんです…レゴリスの美少女総統、いいなあ:(

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