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Re: フリューゲル異伝スレッド

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なし Re: フリューゲル異伝スレッド

msg# 1.8
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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2013/6/3 1:09 | 最終変更
ゲスト    投稿数: 0

== Flugel Another Story vol.8 ======

 陥落は近い。

 自分は──成蘭の王太子、黒石治宗は屈服の一歩手前にいる。

 "ホームステイ"した宮殿の主、ルティーナ・エルツ・ルーシェベルギアス公爵は、自分が寂しい時に側におり、一人になりたい時には視界から消える。その教養は自分の社会学や絵画の話についてこれる程で、しかし知識をひけらかすことなく、頭の回転は自分よりわずかに低く。他人の前では自分の顔を立て、二人きりであればあらゆる求めに応じてくれる。まことに都合のいい存在だった。

 

 そして何よりも誰よりも、彼女は儚く美しく優しい。ルティーナの側にいることは、幸せで暖かく優しい時間であるという事。

 一日の間で、彼女の事を考える時間が徐々に増えてゆく。

 今や自分の中で、ルティーナ公爵はもっとも重要な人物の一人として君臨している。

 

 愛の言葉を捧げれば、おそらくは相思相愛の恋人になることができるだろう。それは恋愛の成就という、人間が一生をかけても得がたいもののひとつ。それが手の届く場所に置かれている。しかしその対価として自分はルティーナに魅惑され、その思考は麻薬中毒のように彼女のことで埋め尽くされるのだ。

 自分がまだ彼女の愛の虜にされていないのは、幼き頃からある対人恐怖症と女性恐怖症の影響であるに過ぎない。女性は値踏みをする。嘘をつく。陰口を言う。試す。化ける──。

 そんな後ろ向きな恐怖心と嫌悪感が最後の砦として機能している。

 成蘭に帰ると言えば、あるいはもう会いたくないといえば、ルティーナは寂しそうな顔をするだろうが逃がしてくれるだろう。

 だがそれで彼女から逃げられるのだろうか。彼女に会えない一日を過ぎるごとに、禁断症状のごとく精神が苛まされるのではないか。そんな状態で彼女に会ってしまったら、自分は完全に彼女の虜になる。

 

 

「ルティーナ様は夢魔なんです。夢と幻と運命を操る魔のモノの一種。犠牲者の絶望と苦悩と後悔を啜って生きているんです」

 公爵付きの侍従エーファ・ブルーンスが、部屋に引きこもった自分に食事を運びながらそう言う。

「夢魔は人間の心の弱ったところにやってきて、"慰め/comfort"という業を使って心の中に依存の種を植えるんです。それは犠牲者の精神の中で発芽して、美しい薔薇に成長します。薔薇は精神を蝕み不安をもたらしますが、夢魔の事を考えたり、夢魔に会ったりすると幸福感を与えます」

「つまり、僕は公爵の餌という訳なのか」

「それが、人間と夢魔の関係なんです」

「……難儀な方だね」

 

 

 

 暗き闇の中で。帳の中で。閨の中で。

「ルティーナ公爵」

「はい。私の王子様」

「ルティーナ公爵」

「はい。私の王子様」

「ルティーナ」

「はい。私の王子様……」

 

 

※上記文書はイメージであり実際の外交に影響を及ぼしません。

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