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Re: フリューゲル異伝スレッド

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なし Re: フリューゲル異伝スレッド

msg# 1.30
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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2014/9/6 0:57
ゲスト    投稿数: 0

●暁の夢魔

 栄耀栄華。十重二十重の利権と、強固な同盟に守られて、我が世の春を謳歌するレゴリス人たち。
 フリューゲル屈指の帝国は、その首都ブリンストも屈指の規模を誇り、帝国の陽の面、影の面いずれにとっても重要な意味を持つ。

 闇の総帥リーゼロッテ・ヴェルトミュラーはいうだろう。「この街は私が育てた」と。草木生い茂る未開の地であったころから彼女はこの街を見守ってきた。農村から小さな街へ。歴史ある都市へ。瓦礫と残骸の廃墟へ。そして今の栄光の都へ。

 旧市街の夜のことだ。人間とは昼に起き、夜には寝るもの。市街は静まりかえり、街灯だけが無人の街を照らす。その無人の街をたった一人白い影が彷徨う。
 十歳に見えるか見えないかの幼い少女。銀の短髪に紫の瞳。それに合わせたかのような白と紫のワンピース。リボンを散りばめられたその意匠は、見る者が見ればアトリエ・ナイトメアのものと気が付くだろう。
 星明かりの下で、冷たい夜風に吹かれながら少女は歩く。当ては無い。たまに立ち止まり、周囲を見渡す。未だ灯っている家々の灯りを複雑な表情で見上げ、また歩き始める。

(寒くないの?)

 誰かが少女に囁いた。
 少女は驚いて辺りを見やるが、世界は孤独であり、今此処には自分自身しかいない。

(あれ、私が見えない? …想像以上に私、弱まっているのかも)

「…見えないよ」

(お話はできるのね。まあ良いでしょう。声も届かないのでは本当に何も干渉できない。ただの幽霊だわ)

「かんしょう?」

(気にしないで。私はエリンシア。暁のエリンシア。夢魔です。妖精とか悪魔とか。そういう風に思って下さい)

「……」

(私、貴方とお友達になりたいの。私の声を聞けるのは、ほんの僅かな人だけ。私は深い絶望を抱くものにしか見えないの。レメゲトンの魔術師に召喚されて、その召喚主が私を認識できずに失敗失敗と騒ぐんだから。失礼しちゃうわ)

「ぜつぼう?」

(わかりやすくいえば、"死にたい"という気持ち。…そう。貴方は今死にたいと思っている。だから私が見えるの。…と、見えないんだっけ。夢魔が見出すのは貴方のような子。夜に暖かいお布団の中にいられない子。大きな青痣をつけられて、涙も涸れ果てて。…これ以上は言いたくないけれど)

「……」

(うん…私も寂しいの)

「……、ゆーり」

(お名前ね、ユーリちゃん。たった今私達は縁で結ばれたわ。…たくさん歩いて疲れたでしょう。今夜はもうお休みなさい。貴方のソウルボードに巣くうホラーは私が取り払ってあげる。だから、安心してお休みなさい)

 …。

 ……。

 ………。

(…もう出てきて良いですよ。魔術師様)

「夢魔の召喚に失敗したと聞いてみれば。…懐かしいな。震えるよ」

(私は暁のエリンシア。何処かでお目にかかったことがございましたか? アストラル体の私を認識するとはそれなりの位階にある術師とお見受けしますが)

「ヴァルター・ディットリヒ。レメゲトンの傲慢の坊やで、この国の総帥。君の弟子だよ」

(ヴァルター。…懐かしい響きがします。きっと宇宙船の頃のことでしょう。もう何百年も昔で、その記憶は忘却の呪いの向こうにあります。ごめんなさい)

「仕方ないさ。君が望むなら、元居た世界へ送還する。すぐには無理かも知れないが約束しよう。この世界に居てくれるのであれば嬉しい。歓迎するよ」

(感謝します。では、まずこの子を保護してあげてください。あとは、それから考えます)

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