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Ertzreich Historie
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Ertzreich Historie (ゲスト, 2014/6/1 22:13)
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王宮の中でもひときわ大きい広間。
普段は静かに王家の栄光をたたえる絵画だけが存在感を放つその広間も、今日の日はその様相を変わらせていた。
金の光を放つ装飾品に家具、まばゆいばかりの光を放つシャンデリア、広間を埋め尽くすテーブルにそれを彩る食器たち。
そしてその広間を埋め尽くさんばかりに集った王国の有力者たち。
誰しもがきらびやかな服を身にまとい、優雅に食事と会話を楽しんでいた。その風景はまるで中世を題材とした絵画のようでもあった。
そんな中で一人だけ違う空気を放つ娘。茶髪に赤味がかった瞳の娘はベランダから半身を乗り出し星を眺めている。
ふと、彼女に気づいた男性が声を掛けようとする。「あのっ」、ハッと振り向いた彼女の顔を見て男性は言葉を詰まらせる。
そして彼女から離れ、元の人波の中へ帰っていく。
彼女はまたか、と思いまた星を見つめる。
この晩餐会だけでも10回はこの様な事があった。みな彼女に声をかけるものの彼女の顔を見るや、避けていくのだ。
いや、話かけようとする彼らはまだましであった。大抵はこの場で浮いている彼女を気にすることもなく、彼女がまるでそこにいないかのように扱う。
こんなのは馴れっこだ。自分に言い聞かせる。現実、彼女はそこまで気にしたそぶりは見せていない。
それでも、まだ14歳の少女にはつらいことであるのは違いない。
ジーと会場の中を見つめる。
会場は全体的に人でごったがえしていた。その中でも特に人口密度が多い所が数か所。
周囲に自身と同年齢ぐらいであろう若者たちを連れる青年。
スーツ姿の大人たち相手に、ぐいぐいと迫っていくキレイな顔をした長髪の女性。
楽しそうに笑いながら、年寄りたちと談笑する娘。
オドオドしながらぐいぐいと迫ってくる大人たちに押されている少年。
いくらか差があっても5人とも輪の中心にいた。それは彼女とは正反対。
彼女はベランダの端で一人で星を見、5人は会場の様々な場所で人波を集めていた。
自分は彼らとは違う、彼女は自然とそうとは思わなかった。
自分も本来あそこにいるはずなのに、なぜ今こんな端で彼らを眺めるだけなのか。
不意にいら立った彼女はあえて柱を蹴ってみた。乙女らしからぬ行為だ。
ガツンと大きな音がした。少し足がしびれる。すこし上気した目で彼女は会場を見た。
会場は変わらぬままに騒がしかった。少しがっかりした彼女は肩を落としたが、また星を見始めた。
星は私を照らしてくれる。
星になった王女様。昔はそんな話を聞いていた。お行儀よく並んで、続きをわくわくしながら聞いていたことを思い出す。
昔のようなわくわくは今はない。
今となっては疎ましい話だ。
ワッと会場が騒がしくなる。彼女には関係ないことだがどうやら、青年がお供を連れて会場を去ったらしい。
正確な情報かは分からないがどうやら、食事が合わなかったようだ。
そんなのことあるのかしら。
疑問に思った彼女の口元は笑っていた。
ハッと自分の口元に気づいた彼女は元の表情に戻る。見てないでしょうね?
すこし不安がるがその心配は無用だった。誰も彼女を見ていない。