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Re: フリューゲル異伝スレッド

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なし Re: フリューゲル異伝スレッド

msg# 1.27
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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2013/10/30 2:54
ゲスト    投稿数: 0

== Flugel Another Story vol.21 ======

 カジノはルーシェベルギアスの主要産業のひとつだ。
 ミストメドウというカジノホールは世界有数の規模を誇り、一夜に動く金は世界最大となる。
 ミストメドウは国営カジノと思われている。実際はルーシェベルギアス公爵家の私有財産であり、その収益は国庫には一銭も入らない。国庫と公爵家財産は厳密に分けられており、圧倒的に後者の方が規模が大きい。国土の85%は公爵家の私有地であり、鉱山もまた公爵家のもの。もちろん国家として最大の納税者はルティーナ・エルツ・ルーシェベルギアスそのひとである。
 カジノスタッフは全員カベルネ・ソーヴィニヨンの現地人であり、そしてカジノで遊ぶことは許されていない。

「そんなうんちくはどうでもいいの。今重要なのはのるかそるか」
 この可憐な公爵閣下はポーカーのテーブルについていて、円卓についている七人のプレイヤーの一人としてカードを眺めている。
 プレイヤーたちに渡されたカードはそれぞれ2枚。まずこの2枚でゲームを続行するか降りるかを決断しなくてはならない。
 苦渋の声とともに早々に一人脱落した。レゴリスの投資家ミハイル・コルサコフは2枚のカードのみで撤退を判断。ルティーナとテーブルを囲めた栄誉を述べて席を辞した。
「…あの」
「急にどうしたのエーファ。難しい話なら王子様にしておいて」
「レゴリスの新総統にヴァルター・ディットリヒが就任しました」
「ふうん」
 ルティーナはディーラにゲームの続行を告げる。テーブルの中心には5枚のカードが伏せられており、そのうち3枚のカードが明らかになる。プレイヤーは手札の2枚と、テーブルの3枚を見比べて合計5枚。プレイヤーたちがそれぞれ顔色をうかがう。なにしろポーカーの勝者はテーブルに一人しか存在できず、その一人が掛け金を総取りする。一時間近くこのメンバーでポーカーに興じていたが、ハイライトとなる今回は、富豪のコルサコフが真剣に悩む程度には高額の金が掛けられている。プレイヤーたちの視線。手の震え。声の震え──それらは心理的情報となってルティーナに判断の材料となる。彼女もまた緊張や葛藤と無縁ではない。彼女はかなりのカードを読めはするが、百戦百勝というわけでもない。
「コール」
 ボード上の3枚のカードを見て、ルティーナはゲームの続行を告げた。全員のコール確認後、ディーラーによってテーブルの上の4枚目のカードが明らかになる。手札の2枚とボードの5枚で役を作り、ショウ・ダウンするルールだ。
「リーゼロッテ…さんといえばいいのかしら? 彼女は何してるの」
「ジャスリーさまと旅行を計画中です」
「そう…。エーファのお役目もおしまい?」
「はい。帰国するかどうかは好きにしろと」
 ゲームが進む。脱落者がいない。それはつまりテーブル上の掛け金の合計が莫大な金額となっており、かつ全員が何らかの勝算を持っているということになる。対面に座っているスオミ・エストニア副王家のパルヌ伯アルフレートもコールを宣言した。
「レゴリスから、国交回復交渉のために首脳会談を提案されています」
「あら、まだ国交してなかったの。ファッションショーのときは何も言われなかったけど」
「講和交渉が長引いていましたから…」
「王子様の仲介を蹴って、王子様の仲介案とほとんど変わらない内容で講和だったっけ」
「いろいろ事情があったんでしょう。会談の時につっこんでみては」
「フォールド」
「えっ?」
 エーファ・ブルーンスは主の脱落宣言に、素っ頓狂な声を上げて周囲の注目を浴び、縮こまった。
(フラッシュで降りちゃうんですか)
(ジャックしかないの。フラッシュ同士になったら負けちゃうわ)
 ショウ・ダウンされ、カールスラントの貴族令嬢フレゼリシア・Z・メートヒェンヴェルトがエースを含んだフラッシュで場を制した。
 ローティーンの少女に数億Vaに相当するプラチナ・チップの山が押し出され、拍手が巻き起こる。
「おめでとう。メートヒェンヴェルト」
「あ、有難うございます。ルティーナ公爵様」
「可愛いわね。後で私の部屋に来なさい。ご褒美をあげる」

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