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Re: フリューゲル異伝スレッド

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レゴリス帝国

なし Re: フリューゲル異伝スレッド

msg# 1.25
depth:
1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2013/10/13 18:29
レゴリス帝国  一人前   投稿数: 84

 旅客機の搭乗口からタラップを用いて駐機場に降りると、その目の前に数台の黒塗りの自動車とSPと思われる男性が数名、そして1人の可憐な美少女が立っていた。
 ヴァルターはこの出迎えに少々混乱していたが、それを断つかのように少女はヴァルターと目線を合わせた。
 その刹那、何か確信したような表情をした少女はこう口を開いた。
「…お久しぶりです。ヴァルターさん」

Flugel Another Story Regolith Side vol.3

「数百年ぶりの再会 後編/Reunion of several hundred years the second volume」

「エリーゼ……なのか?」
「ええ……そうですよ。やっと会えましたね。ヴァルターさん♪」
 エリーゼは首を少し左に傾け、そう笑いかけてくれた。
 その姿は……紛れも無くエリーゼだった。
 もちろん、最後に会った時から400年以上経過していることもあり、外見こそあの頃とは変わっていなかったが、雰囲気はかなり大人になったような、そんな感じがした。
 ヴァルターはエリーゼをじっと見つめる。
 きらめくようにつややかな髪、見ているだけで引き込まれそうな青色の瞳、落ち着いて上品だが愛嬌のある佇まい…。
 全てがかつて見たエリーゼの姿と一致した時、ヴァルターは無意識にエリーゼを抱きしめた。
 ヴァルターに突然抱きしめられたエリーゼは最初こそ戸惑っていたが、直ぐにそれを受け入れた。

 少しの間抱き合っていたが、この場所は駐機場。旅客機を整備するスタッフたちも大勢いる。
 彼女は統領選挙に出馬している最中なのだから、公衆の面前でそのような事をされては困る……。とSPの一人が止めに入る。
「シェルストリア様、ここは人の往来が激しいですから一先ずお車の中へ……。」
 そうですね。とSPに言葉を返した後、エリーゼはヴァルターの手を引いて黒塗りの自動車の中へと案内する。

 エリーゼはヴァルターを後部座席に座らせ、自らはその隣の席に座った。
「このままタールウィルの私の屋敷へ行って下さい。」
 運転手は無言で頷きつつ、他の自動車へ無線で行き先を告げ、前方の自動車から順次タールウィルに向け走り始める。

「さて…改めて。お久しぶりです。」
「ああ、久しぶりだね、エリーゼ。」
「しかし……あの頃と全く変わっていないね。外見然り、性格然り。違うのは雰囲気くらいだよ。」
「…そういうヴァルターさんは、外見こそ変わっていますが、雰囲気や性格は全く変わっていませんね。」

 これを皮切りにヴァルターとエリーゼは、自動車に揺られながら様々なことを話した。
 エリーゼとの出会い、フィブリノーゲンの昔話、ヴァルターが倒された後のエリーゼの話、フリューゲル到着後の生い立ち……。
 数えればきりが無いほど話した。
 エリーゼと会話をしていると、気分が安らぐ…ヴァルターはそう改めて感じた。

 気がつけばヴァルターらを乗せた自動車の車列はタールウィルにあるエリーゼの屋敷に入ろうとしていた所だった。
「(意外と小さいな……)」
 ヴァルターは自動車の車窓から見えたエリーゼの屋敷を見やった。
 屋敷と言われると、どうしても【怠惰/Tragheir】のセシリア・アルヴィドソンが所有している巨大な屋敷を連想してしまう。
 しかし、エリーゼの屋敷はそれとは比べ物にならない程規模が小さい。
 最も、世間一般ではこれ位の規模でも十分屋敷と言えるのだろう。

 正門をくぐり、正面玄関の前にあるロータリーに自分たちの乗った自動車が停車した。
 エリーゼに乗った時と同じように手を引かれ、ヴァルターは自動車から下りると、正面玄関の方に数名の執事やメイドが視界に入った。
 彼らは自分達を視認すると、「お帰りなさいませ。シェルストリア様。そしてディットリヒ様。」と声を掛けてきた。
 
 執事らの出迎えの後、ヴァルターはエリーゼと一旦別れ、執事に案内され客室に向かった。
「シェルストリア様がこちらの屋敷に戻るのは1カ月ぶりの事です。」
 客室に到着した後、ヴァルターは執事との雑談に興じていた。
 執事曰く、普段はルセナールにある紫煙の図書館のとある部屋に住んでおり、この屋敷に来るのは数カ月に1回位しか無いそうだ。
「──では、私はそろそろ戻らさせて頂きます。後程、夕食の御用意が出来ましたら呼びに参りますので……。」
「分かった。ここに留まらせて悪かったね。」
「いえいえ、別に構いませんよ。では、ごゆっくりお寛ぎ下さい。」
 そう言って執事は退室した。

 執事が退室した後、ヴァルターは旅客機に乗る前に空港で購入したレゴリス土産を整理していた。
 レゴリス土産の内訳はユーハイム・ティー・マイスターという帝国では有名なお菓子ブランドの各種お菓子、ワイン等計10点だ。
「しかし自分は何故これを買ってきたのだろうか……。」
 ヴァルターは古めかしいデザインをした机の上に乗っかっている大きな紙袋を椅子から眺めた。
 その大きな紙袋にはATELIER NIGHTMAREのロゴが入っていた。
 アトリエ・ナイトメア……。帝国で最も有名かつ最古のロリータ・ファッションブランドである。
 空港に着いた際、再会を祝してエリーゼに何かプレゼントをしたいと思ったヴァルターは、何故かアトリエ・ナイトメアの店に直行し、そこでエリーゼに似合いそうな服を探して購入してきたのだった。
 鮮やかな赤に染め上がった別珍ローテとローゼワンピース、そして黒色の小さいシルクハット……。
 自分的にはエリーゼに似合うとは思うが、自信が無い。とヴァルターは思っていた。
「喜んでくれると良いんだが……。」
 ヴァルターはそう独語した。

 暫くして、先ほど雑談した執事がヴァルターを呼びに来た。夕食の準備が出来たそうだ。
 ヴァルターは執事の後ろについて行き、1階の大食堂の方に向かった。
 大食堂の中にあるテーブルには何も置かれて無かった為、ヴァルターは少し戸惑ったが、執事の案内で大食堂に隣接するベランダに移動した。
 そこに並べられているテーブルの一つに、豪華な料理が並べられたテーブルがあった。
 ヴァルターはそのテーブルのすぐ近くに置かれた2つの椅子の片方に座る。
「エリー……、シェルストリアさんはまだ来られていないのですか?」
 ヴァルターは自分をここに案内した執事に質問する。
「シェルストリア様は只今御召し替えをされているそうです。」
 そうですか……と言い、暫くヴァルターは無言になる。

 それから凡そ5分後、エリーゼがやってきた。
 奇麗に着飾った彼女の姿を見たヴァルターは時を忘れ、暫く見惚れていた。
 やがて、ヴァルターにじっと見つめられているのが恥ずかしくなったのか、エリーゼの頬が少し赤くなった。
「…ヴァルターさん、その、じっと見つめられていると恥ずかしいんですが……。」
「ああ、ごめんごめん。エリーゼがあまりにも奇麗だったから、見惚れてたんだ。」
「もう、ヴァルターさんの馬鹿」
 そう言ってエリーゼはぷいと顔をそむける。
「(本当に可愛いなぁ、エリーゼは)」
 そう思いつつ、彼らはささやかな夕食会を始めた。

「──もうこんな時間か。」
「あ、本当ですね。」
 時刻は午後9時を回っていた。夕食の後、2人はそのままベランダで雑談していたのだった。
「……さてと、自分はもう寝させてもらうよ。」
「そうですか……。」
 エリーゼが一瞬残念そうな表情になったが、即座に元の表情に戻った。
「おやすみなさい。ヴァルターさん。」
「ああ、おやすみ、エリーゼ。」
 そう言ってヴァルターは自分に宛がわれた客室に戻り、客室にある浴室で入浴した後、客室に置いてあるダブルベットに倒れこみそのまま寝てしまった。

 ぐっすり寝ていたヴァルターは急に飛び起きた。理由は簡単だ。近くに何らかのモノが居る事を自分が持つ端末が探知したからだ。
 ヴァルターは魔術結社レメゲトンの最高幹部の一員である事から、反レメゲトンを掲げる団体の暗殺の標的になりやすい。
 その為、ヴァルターは寝ている間も端末を起動させ、常に周辺を警戒させている。
 普段なら結界も張るが、ラトアーニャではそのような事は起きないだろうと踏んでいたから張っていなかった。
 懐中時計で時間を確認すると、時計の針は深夜の1時を指していた。
「やれやれ……ここで戦闘はあまりしたくないんだがな……。」
 そう言いながら、ヴァルターはいつも携帯しているサーベルを持ち、端末が探知した場所、客室に隣接するベランダに移動した。

 ベランダに通じる扉を開くとと、そこには手摺に寄りかかり夜空を眺めているエリーゼが居た。
 彼女は夕食会とは別の──更に豪華なドレスを着ていた。
「(ああ──端末が反応した理由はこれか)」
 ヴァルターは即座に理解した。
 彼女はメディウムと呼ばれる──要は魔物に良いように体を作りかえられた人種の事だが、その人種特有の能力として、魔物の姿に変身して、その魔物の能力を用いて戦闘を行うというものがある。
 彼女はこの能力を行使して、リリス/Lilithに属する魔物──プリンセスになっていたのだ。
 ヴァルターの端末は様々な魔物や魔術師等を探知するようにプログラムされていたから、恐らく端末はエリーゼに対して反応したのだろう。
「(しかし──プリンセスか)」
 ヴァルターはプリンセスの服装を着たエリーゼを見て、何とも言えない感情を抱いた。
 確かに、プリンセスの姿であるエリーゼは凄く美しい。今すぐにでも抱きしめたい位に。
 だが──ヴァルターはそのプリンセスによって致命傷を負い、結果として死んでしまったのだから、当然の感情とも言えるだろう。

 扉が開く音に気付いたエリーゼは、その音の鳴った方向を見やった。
 ヴァルターと目が会ったエリーゼは驚くような表情をしていた。
「…こんばんわ、エリーゼ。」
「……こんばんわ。」
 そう挨拶を交わした後、ヴァルターは手摺に寄りかかるエリーゼの隣に陣取り、手摺に寄り掛かった。
 ヴァルターは夜空を見上げ、こう独語した。
「…星が、凄い奇麗だ。」
「そうですね……。」
 少なくとも、レゴリスのブリンストから見上げた夜空よりは星が見えていた。
 恐らく、この屋敷がタールウィルの中心部よりかなり離れた場所に位置しているからだろう。とヴァルターは思った。
 ──暫く無言になってしまったが、程なくしてエリーゼが口を開いた。
「……そう言えば、まだ一つ聞いていなかった事があったのですが、質問しても良いでしょうか?」
「ん?構わないけど。」
「ヴァルターさんは、あの時、何を私に伝えようとしたのですか……?」
「 あの時、か……。」
 恐らく自分があの化け物──プリンセスによって致命傷を負い、エリーゼに看取られながら死んでいった時に、彼女に伝えようとした言葉の事だろう。
 その言葉を伝えるのが、今回のラトアーニャへ来た最大の目的だった。
「……そうだね、あの時は──」

「『貴方の事がずっと好きでした。』と伝えたかったんだよ。」
「──!」
 エリーゼは驚いた表情をしていた。
「そしてその気持ちは──今も変わらないんだよ。エリーゼ。」
 そう言ったヴァルターは間髪入れずエリーゼを抱き締めた。
「エリーゼ……僕は君の事が大好きなんだ。愛おしくて堪らないんだ。」
「………」
 双方共に黙り込む。
「…私の事、忘れていたのかと思ってました。」
「まさか。あの時の後も、ずっと君の事を想っていたんだよ。」
「──ふふ、私と同じですね。」
 ヴァルターは無言でエリーゼの言葉を聞き続ける。
「私も、ずっと貴方の事を想っていたんですよ。ヴァルター。」
 そう言ったエリーゼは突然接吻してきた。
 ヴァルターとエリーゼの唇同士が少しだけ触れる短いキス。
 ヴァルターは少し混乱していたが、エリーゼは気にせず言葉を続ける。
「…私も大好きですよ。貴方の事を愛したくて堪らないんです。」
 ヴァルターの、数百年も続いた片想いが両想いへと変わった瞬間だった。
「エリーゼ…」
「ヴァルター…」
 お互いの名前の呼び合いつつ、彼らは接吻を繰り返す。
 まるで自分達の愛を確かめるかのように……。

Fin

◆あとかぎ
自分にはSSを書ける文才は無いのですが、何を血迷ったのか前後編に分かれる程長いSSを書いてしまいましたw
でも、なんとか完結したので良かったなぁと思う次第です。
最後に、推敲をして下さったveirosさん、許諾を下さったラトアーニャさんに最大限の感謝を。

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