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Re: フリューゲル異伝スレッド

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レゴリス帝国

なし Re: フリューゲル異伝スレッド

msg# 1.32
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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2017/7/4 23:35
レゴリス帝国  一人前   投稿数: 84

Flugel Another Story Regolith Side vol.5

「世界に冠たる我がレゴリス」

 フリューゲル第三位の国家規模を誇る大国、レゴリス帝国
 約410年の齢を重ねたこの帝国は、ミッドガルド、成蘭、ウェールリズセという盟邦を相次いで失いながらもその国力を維持し続けている。
 そんな国家を統べるのは第28代レゴリス帝国総統のルーミヤ・グドリャン。無所属でありながら当選した初めての総統。
 491年戦争以降の帝国の主要な戦争に参戦し活躍し、先の第二次フリュー内戦では派遣軍総司令官として活躍し、内線の終結に大いに寄与した人物である。
 そんな彼女は総統官邸の執務室にあるガラスで出来た巨大な窓の前に立ち、そこに広がるブリンストの風景を眺めていた。
「世界に冠たる我がレゴリス、か………」
 彼女は3選するために出馬した先の総統選挙でしきりに叫んだそのフレーズを呟く。

 "世界に冠たる我がレゴリス"────レゴリス帝国の国歌である。
 旧ドイツのそれを──メロディはそのままに、歌詞は多少変えたものであったが、概ねそれを踏襲した国歌だ。
 嘗てのレゴリス帝国建国当初の願望を詰め込み、その歌詞の通りの国家と成った今なお親しまれている。
 いや、成って衰退しつつあると言った方が正しいか。とグドリャンは訂正する。
 
 国歌で歌われた「この世界の万物に冠たれ」というフレーズは491年戦争以降の普欧帝国やアクアマリン帝国亡き中、永遠の盟邦ミッドガルド帝国と永久同盟を結び、経済的にも軍事的にも世界1位に登り詰めた時に達成した。
 嘗てのアースガルド条約機構時代をも凌ぐそれは非常に強力な影響力を持ち、それを武器に様々な事象に介入していった。
 正にその時こそ帝国の黄金の時代であったと言っても間違いではないだろう。

 だが、それも今や昔である。
 ミッドガルド、成蘭、ウェールリズセと相次いで盟邦を失い、それによって影響力の源泉であった安全保障環境を失った。
 それと同時期に相次ぐ工業国の鎖国により経済力の源泉であった大口商品輸出国をも失い、安定供給の環境を失った。
 挙句の果てには資源国をも鎖国したため燃料に困窮し、帝国の経済活動が一度停止した上、回復したは良いが今度は国庫不足で経済活動が停止するという大失態を犯し、信用を失った。
 そうして黄金の時代は終わり、混沌と衰退の時代が始まった。
 今では帝国は700兆Va近い負債を抱え、また国家規模においても世界第三位と、嘗て帝国より下であったストリーダやヘルトジブリールの後塵を拝している。
 燃料供給も安定せず、ヘルトジブリールらの善意によって賄われている燃料が今や頼りであり、嘗ての超大国の面影はもはや無い瀕死の病人である。
 
 そんな瀕死の病人と化した帝国の国民らは嘗ての偉大な祖国の面影を国歌に重ねる。
 「この世界の万物に冠たれ」と。
 「偉大なる帝国に再び黄金の時代を」と。 
 彼女はそれに答えなければならない。選挙で「帝国に再び黄金の時代を」と演説し、国民の期待によって総統に当選した身なのだから。

 だが、帝国に再び黄金の時代を訪れさせる道程はまだほど遠い。
 経済こそレート引き下げの実施によって安定しつつあるが、燃料供給や銀供給の面から何時まで引き下げられるか分からない。
 軍事面では第二次フリュー内戦で重傷を負った帝国軍の完全な回復が先述の経済活動停止に伴う財政難等により今だ回復しきれていない。
 安保面でも永久同盟の代替と称されたPDECは一方の加盟連合体であるENECの衰退によりその影響力は急速に失われつつある。
 これら全てを解決して、初めて再び黄金の時代を訪れさせる為の土台が出来上がる。
 それを成すにはとても難しいだろう。だが、成さねばならない。
 自らを選んだ国民がそれを望んでいるのだから。望まれている以上、それを成すよう努力するのが総統の職務であり義務である。

 そう思いふけていた彼女に邪魔が入る。年季の入った執務机の上に据え付けられた多機能電話機が鳴っているのだ。
 少し憂鬱な表情をしながら彼女は受話器をとる。
「何だね………私は今忙しいのだが」
 少し怒りの意思が込められたその声に対して、申し訳無さそうな声で対するのは首席秘書官だった。
 彼は何度も謝りつつも主人を呼んだ理由を説明する。
「レンツモーナント通産大臣と、ラウエンシュタイン財務大臣が総統閣下との会談を望まれてこちらに来られております」
 彼女はそれに対して溜息を吐きながら了承と10分程待たせる旨を首席秘書官に伝え、受話器を置く。

「………面倒な話題で無いと良いのだが」
 そう彼女は呟く。
 だが通産大臣と財務大臣が揃って会談を望む時は、面倒な話題だと相場が決まっている。少なくとも今まではそうだった。
 どうせレート絡みの面倒な話題であろう。彼女はそう予想を立てた。
 予想しつつ彼女は身支度を整える。一国の総統である以上、それに見合う身だしなみというものがあり、それに合わせねばならない。
 そうこうしている内に10分が経過し、執務室と廊下を遮る巨大な扉を叩くノック音が室内に響く。
 それに対して彼女は「入り給え」と返答する。
 応えるかのように開く扉とその隙間から2つの人影が室内に入る。

 ───こうして、彼女の3期目の仕事が本格的に始まった。帝国に再び黄金の時代を訪れさせる為の、偉大な仕事が。
 

◆あとかぎ
久し振りにSSというものを書いてみました。フリューゲルアンソロジーが過疎っていてとても悲しいので皆さんもSSを書いてみましょう:)

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