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Re: フリューゲル異伝スレッド

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なし Re: フリューゲル異伝スレッド

msg# 1.17
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1
前の投稿 - 次の投稿 | 親投稿 - 子投稿なし | 投稿日時 2013/7/23 19:14 | 最終変更
ゲスト    投稿数: 0

== Flugel Another Story vol.16 ======

ジャスリーさまが失踪した。

リーゼロッテ・ヴェルトミュラー総統が他国との首脳会談のための国外に出立していたある日のこと。
ジャスリーさまは忽然と、何の前触れもなく姿を消してしまったのである。

警備主任者は戦慄した。ジャスリーさまはリーゼロッテ総統から国賓待遇で遇するよう指示されており、総統は任務に失敗するような無能を決して許さないお方だった。事が露見すれば出世の道が閉ざされるどころか、もしジャスリーさまの身に何かあれば──例えば反総統派の手に落ちることがあれば──生命すら危うい。不可解な事故がいつ自分に降りかかるか知れたものではない。

箝口令が敷かれた。総統が帰国するまでの間に見つけるよう、秘密裏の捜索が始められたのである。

ジャスリーさまはお美しく、気だても良く人懐っこくて上品で明るい感じの可愛いは正義な美女であったから、お屋敷で彼女を知らぬものはいない。捜索は効率良く行われた。

ジャスリーさまの自室はきれいに整理されていて、窓枠はしっかりと施錠されている。ここは二階で、外部からの侵入や脱出の形跡は無い。ただ何処から入り込んだのか、白猫が一匹ジャスリーさまの寝台で我が物顔で丸くなって眠っていた。警備主任者はこの猫を重要参考猫として、侵入経路の推定やDNA鑑定を行ったが有益な情報は出なかった。

ジャスリーさまは冬の間は自室で昼寝することが多く、春の間は中庭の芝生の上で昼寝することが多かった。寝る、食べる、遊ぶ以外の動作を行っているところは目撃されていない。彼女は英雄の介添人にして運命の少女。ただそこにいるだけで盟約者に数奇な運命と栄光と勝利、そして最終的な破滅をもたらす。

直近の目撃証言では、ジャスリーさまはメイドとレゴリスの夏の暑さについて語っていた。メイドはレゴリス各地での熱中症多発のニュースに触れ、うっかり外で寝ないでください云々と語ったという。

プロファイリングが行われ、「ジャスリーさまは何処か近くで寝ている」という結果が出た。近隣の屋敷やホテルなどにも捜索範囲が広げられたが、芳しい結果も情報も得られなかった。白猫は騒がしいなというような顔をしていたが、メイドが買ってきたネコ缶を平らげると、エアコンのリコモンを操作するという離れ業を演じてのけ、何事も無かったかのように丸くなって眠りについた。

リーゼロッテ総統の帰国の前日。警備主任者は妻と泣きながら最後の晩餐を行い、弁護士に財産の相続手続きについて任せ、恩人知人にそれぞれ遺書を書いた。

「この猫、本当にネコ缶食べたのかしら」
報告を受けた総統はジャスリーさまの失踪よりも白猫の日々の過ごし方について興味を抱いた。
総統は寛大にもジャスリーさまの失踪については不問としたが、むしろ責任者として報告を怠ったことを問題視して、彼を警備主任から猫の餌係りへの配置転換を指示された。

同日、ジャスリーさまが数日ぶりに姿をあらわし、リーゼロッテ総統とお茶を楽しまれた。代わりに白猫が失踪した。

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