我が国からは私、宣教省長官であるシュルツと、エーラーン学院のヴィンデルバンド学院長のほか、7名の聖職者・宗教学者が出席いたします。

この会合ではアクアマリン王国でのアクアマリン崇拝とゾロアスター教の関連性における両国の認識を確認し、今後期待されるアクアマリン王国でのゾロアスター布教についても意見を交換、可能であれば布教に関する取り決めを行いたいと思います。

弊国からは、宮廷侍従長の私、リフィル・フィオーネを始めとする
6人の宮廷関係者が出席致します。
若年の身で至らぬ点があるかもしれませんが宜しくお願いしますね。

まずは、アクアマリン崇拝とゾロアスター教の関連性に対する貴国の認識についてお聞き出来ればと思います。

まず、我が国の情報機関が得た「エアリーヌ王が過去にゾロアスター教の教会を訪れていた」という情報をもとに、我が国はさらなる情報収集を行い、エアリーヌ王が何らかの形でゾロアスター教との接点を持つものと確信した。
また、宗教比較研究では、「神託」という概念がゾロアスター教の考え方に酷似しており、それをある自然物（「アクアマリン」、ゾロアスター教では「火」）が仲介するという共通点がある。
そのほか、宗教指導者が一つの名を代々襲名することも共通している。

我が国は、ゾロアスター教における預言者ゾロアスターと同様にエアリーヌ王も神に預言者として選ばれたのではないかという意見である。
つまり、エアリーヌ王はアクアマリンを通じて、マズダー神より神託を受けているのではないかと考える。
もしそうであると仮定すれば、エアリーヌ王はゾロアスターに次ぐ預言者であるということになる。

両親が熱心なゾロアスター教徒であったこともあり、
エアリーヌもまたゾロアスター教徒であったのは事実です。
宝石アクアマリンを手に入れたのもまた、ゾロアスター教会においてだと本人から聞いています。

これら事実は、貴国情報機関の調査内容とほぼ一致します。

これは公式的には否定している事ですが、
本質的にはアクアマリン崇拝とはゾロアスター教が弊国内で土着し、
地域宗教として発展したものとお考え頂ければ幸いです。

では何故、公式的に否定しているかと言いますと弊国国内には宝石アクアマリンを神と信奉する者も多く、
ゾロアスター教と同一化される事を嫌う人々も存在するのです。
宗教化を禁止しているのも、宗教化する事によって本質的にはゾロアスター教と同義なのにも関わらず、
宝石アクアマリンのみを神と崇めゾロアスター神からの啓示されている事を否定する対立構造へと変異する事を恐れたからです。

このような複雑な国内状況はアヴェスター発禁問題でスオミ王国から流入した流民によって更に悪化しました。
スオミ王国でも同様の土着したゾロアスター教があり、ローカル化されたゾロアスター教が複雑に混ざりあう国情へと変異したのです。

この事態を受けて、弊国としては貴国に正式な布教活動を行って頂く事を提案致します。
複雑化した教義を貴国主導で統一化し、
最終的には管区主教に20歳を経過し国王から退位したものが就任する形に落ちつければと思っております。

貴国の希望通りに、退位した国王を管区主教とする教会を設立すると、貴国内でアクアマリン崇拝者とゾロアスター教徒との対立が発生する可能性が高い。
例を挙げると、龍鮮地域においては現在でもゾロアスター教徒と礼教徒の対立が残っている。より土着信仰の強い貴国ではなおさらであろう。

我が国はアクアマリン崇拝をゾロアスター教の一宗派とし、マズダー神が別の形、つまりアクアマリンを通してエアリーヌに啓示を与えていると解釈するのが最適かと思う。
その後、徐々にゾロアスター教の教義を浸透させ、最終的に統合することができれば、貴国内の宗教対立は解消されるものと考える。

貴国民のほとんどはエアリーヌ王を信奉していると聞く。エアリーヌ王自身から国民に布告すれば、最小限の混乱で抑えられないだろうか?

わかりました。
しかし、議会政治が始まった今このような重要な布告を出す時期としては適当ではありません。

頃合いがつくまで徐々に国民に浸透させ、期を熟したときに布告を公布したいと思いますが、如何でしょうか。
退位まで3年と迫っている現少女王がこの布告を行えるかは不確定ですが、歴代国王へこの取り決めは引き継いでいくことをお誓い申し上げます。

布告の時期は貴国にお任せする。

我が国からも秘密裏に聖職者を派遣し、貴国内のゾロアスター教徒を統制しつつ、水面下で貴国民へのゾロアスター教の教義の浸透に助力させようと思う。

一任に感謝致します。

弊国としては、隣国スオミ王国の動きを注視しながら
今後も同国ゾロアスター信徒の保護と援助を行っていきます。

この度は有意義な意見交換会を主宰して頂き、
ありがとうございました。

こちらこそ、ご出席いただき誠にありがとうございました。
貴国の発展と、両国の友好関係のさらなる深化を期待します。